平成２９年度資源評価報告書（ダイジェスト版）
| 標準和名 | ヒラメ |  |
| 学名 | Paralichthys olivaceus | |
| 系群名 | 日本海西部・東シナ海系群 | |
| 担当水研 | 西海区水産研究所 |
生物学的特性
| 寿命： | 12歳 |
| 成熟開始年齢： | 2歳（50％）、3歳（100％） |
| 産卵期・産卵場： | 南ほど早く、鹿児島沿岸では1～3月、長崎から熊本沿岸では2～3月、北九州沿岸では2～4月、鳥取沿岸では3～4月 |
| 食性： | 着底後の稚魚はアミ類や魚類の仔魚、成魚は魚類、甲殻類、イカ類 |
| 捕食者： | 着底期に同種のヒラメ、アイナメ、ホウボウ、ハゼ類等 |
漁業の特徴
本系群を対象とする漁業は刺網、小型底びき網、沖合底びき網、定置網、釣、はえ縄など多種多様である。 体長制限による0 歳魚の漁獲規制が行われており、漁獲対象はほとんどが1 歳以上の個体である。栽培漁業の対象種として、1980年代から事業規模での種苗放流が行われてきたが、近年の放流尾数は減少しており、1999年には560万尾であったものが2015年には338万尾となっている。
漁獲の動向
漁獲量は1984年に1,982トンを記録した後、1997年までは1,500～1,900トンを維持していたが、1998年以降減少し1000トン前半となった。その後、増減を繰り返しながら、2016年の漁獲量は1,061トンであった。2歳以下の若齢魚の漁獲量は1996年までは全体の60％程度であったが、それ以降減少し2016年では30％程度まで低下した。 2016年における7歳+の漁獲尾数は、年齢組成の割合としては低いものの、前年に対して1.4倍の2万尾となり、過去における最大値を示した。
資源評価法
漁業種類別の年齢組成および漁獲量と体長測定資料を基に、各県ごとに1986年以降の漁業種類別年齢別漁獲尾数を推定し、コホート解析により資源尾数を推定した。資源量は、推定した資源尾数に年齢別平均体重を乗じ、それを合計した値とした。親魚量は2歳魚の資源量の半分と3歳以上の資源量を合計した値とした。自然死亡係数Mは寿命を12年として0.208を用いた。 現在は漁獲物の体長制限が行われており0歳魚の漁獲は少ないため、コホート解析および将来予測は1歳以上の個体の年齢別漁獲尾数データを用いて行った。
資源状態
資源量は1986～1997年まで3,000トンで、その後増減を繰り返し、2016年資源量は3,556トンと推定された。親魚量は1986年から1997年まで2,000トン前後で推移し、その後増加に転じ2016年の親魚量は2,900トンに達した。再生産成功率は低下が続き、2015年には0.38尾/kgとなり、ピーク時の25％程度であった。Blimitは加入量の上位10％と再生産成功率の上位10％の交点となる親魚量（2,144トン）とした。本資源ではこれまでの親魚量の最高値は最低値の1.6倍程度であり、変動幅が非常に小さいため、中位と高位の区分は困難と判断し、高位水準の設定は行っていない。中位と低位の境界値をBlimitとし、2016年の親魚量はBlimitを上回っているため中位 と判断した。動向は最近5年間（2012～2016年）の資源量の推移から横ばいと判断した。
管理方策
2016年の親魚量は2,900トンで、Blimitを上回っているため、資源量を維持することを管理目標とし、Fsus（0.33）を管理基準としてABCを算定 した。 Fsusでは漁獲量、資源量及び親魚量は増加することが予測された。Fcurrent（0.39）は資源量の維持を目標とした限界値Fsus（0.33）を上回っている。これは、現状の親魚量がBlimitを上回っているものの、近年の再生産成功率が低く推移しているためで、Fcurrent（0.39）で漁獲を続けると漁獲量、資源量及び親魚量は今後減少することが予測される。2016年の混入率は8.4％、添加効率は0.03であった。
| 管理基準 | Target/Limit | 2018年ABC （トン） |
漁獲割合 (％) |
F値 (現状のF値からの 増減％） |
| Fsus | Target | 709 | 21 | 0.26 (－33％) |
| Limit | 856 | 26 | 0.33 (－16％) |
- ABC算定規則1-1)-(1)を用いた
- Limitは、管理基準の下で許容される最大レベルのF値（漁獲係数）による漁獲量、Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、より安定的な資源の増大が期待されるF値による漁獲量
- Ftarget=αFlimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
- F値（漁獲係数）は各年齢の平均
- 漁獲割合は2018年の漁獲量／資源量
- ABCに0歳魚は含まれない
- 2017年以降の加入量は、過去3年間の再生産成功率平均値を使用して予測した
資源評価のまとめ
- 資源水準は中位、動向は横ばい
- 2016年の資源量は3,556トン、親魚量は2,900トンでBlimit(2,144トン）を上回っている
- 再生産成功率は低く推移している
管理方策のまとめ
- 資源量を維持することを管理目標とし、資源量の維持（Fsus）を管理基準としてABCを算定した
- Fcurrent（0.39）は資源量の維持を目標としたFsus（0.33）を上回っているため、Fcurrentで漁獲すると漁獲量、資源量及び親魚量は今後減少することが予測された
執筆者：中川雅弘 ・吉村 拓
資源評価は毎年更新されます。