令和2年度資源評価報告書（ダイジェスト版）
| 標準和名 | ウルメイワシ |  |
| 学名 | Etrumeus micropus | |
| 系群名 | 太平洋系群 | |
| 担当水研 | 水産資源研究所 |
生物学的特性
| 寿命： | 2歳程度 |
| 成熟開始年齢： | 9カ月（30％）、12カ月（100％） |
| 産卵期・産卵場： | 10月～翌年7月、盛期は3月～6月、前半は土佐湾周辺海域中心、後半は伊豆諸島～関東近海にも広がる |
| 食性： | 動物プランクトン等 |
| 捕食者： | 大型浮魚等 |
漁業の特徴
主にまき網、定置網により漁獲される。
和歌山県では棒受網、高知県では多鈎釣でも漁獲される。
仔稚魚（シラス）期は船びき網で漁獲される。
漁獲の大部分は0歳～1歳である。
宮崎県～三重県の漁獲量は太平洋岸各県（宮崎県～千葉県）の総漁獲量の約90％を占める。
外国船による漁獲はない。
漁獲の動向
宮崎県～三重県の漁獲量は、1985年～1991年は5,000トン～6,000トン台であったが、1992年～1998年に増加し、2.0万トン前後となった。
1999年～2004年は1.0万トン～1.4万トンまで減少したが、2005年以降再び増加傾向となり、2011年～2017年は3.0万トン～4.7万トン台で推移した。
2018年は3.0万トンを下回って2.2万トンとなり、2019年は2.3万トンであった。
資源評価法
1979年～2019年の卵稚仔調査結果から、日向灘～潮岬の産卵量を算出して資源量指標値とし、資源の水準を判断した。
宮崎県～三重県の漁獲を対象とし、1999年～2020年の年齢別・年別（半年別）漁獲尾数等に基づくコホート解析により資源量を推定した。
半期（1月～6月、7月～12月）単位で寿命2歳（24月齢）までの4期とし、半年単位のコホート解析により年齢別資源尾数、資源量、漁獲係数を推定した｡
資源量の推移より動向を判断した。
コホート解析期間は低位の期間を含まないため、水準判断には用いていない。
資源状態
1999年以降、資源量は4.3万トン～11.9万トン、親魚量は2.2万トン～8.1万トン、加入量は13億尾～65億尾の範囲で増減を繰り返しながら推移している。
2020年の資源量は4.7万トン、親魚量は2.4万トン。
コホート解析は低位の期間を含んでいないため、Blimitは設定していない。
資源水準は、過去41年間（1979年～2019年）の年間産卵量の最大値と最小値の間を3等分して高位、中位、低位としている。
2019年の産卵量は75兆粒となり、水準は中位と判断した。
直近5年間（2016年～2020年）の資源量は、2016年（9.6万トン）から2020年（4.7万トン）にかけて減少したため、動向は減少と判断した。
長期的には再生産は順調であるが、直近の資源は減少傾向にあることから、その動向には注視が必要である。
管理方策
2003年以降の資源水準は中位～高位を保っている。
しかし、直近では資源は減少傾向にあるため、親魚量を増加に転じさせることを管理方策として、0.8Fcurrentを管理基準に2021年ABCを算出した。
本資源は世代が短く、年々の再生産の成功がその年の資源量に大きく影響するため、再生産の場となる沿岸の産卵場を維持することが必要である。
再生産成功率の変動も大きく不確実性が高いことからも、コホート解析および卵稚仔調査から得られる資源情報に基づいて、翌年の適切な漁獲量を算定することに重点を置くのが妥当である。
| 管理基準 | Target／Limit | 2021年ABC （千トン） |
漁獲割合 （％） |
F値 （現状のF値から の増減％） |
| 0.8Fcurrent | Target | 27 | 18 | 0.28 （－42％） |
| Limit | 32 | 22 | 0.35 （－28％） |
- ABC算定規則1-3)-(3)を用いた
- Limitは、管理基準の下で許容される最大レベルの漁獲係数（F値）による漁獲量、Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、より安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量
- Fcurrentの削減率β2を乗じた0.8Fcurrentを管理基準として、ABClimitを算出した
- Ftarget＝αFlimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
- コホート解析では、半期（1月～6月、7月～12月）単位で寿命24月齢までの4期とし、0～5月齢（0歳）を1期、6～11月齢（0歳）を2期、12～17月齢（1歳）を3期、18～23月齢（1歳）を4期とした
- Fcurrentは2017年～2019年の1期～4期のFの平均値
- 漁獲割合は2021年の1期および3期の漁獲量／資源量と2期および4期の漁獲量／資源量の平均値
- F値は1期～4期の平均値
- 年々の親魚量と過去10年（2010年～2019年）の再生産成功率中央値から2021年以降の新規加入量を仮定した
資源評価のまとめ
- 資源水準は中位、動向は減少
- 2020年の資源量は4.7万トン、親魚量は2.4万トン
- 資源量、親魚量、加入量は増減を繰り返しながら推移しており、直近の資源動向に注視が必要である
管理方策のまとめ
- 親魚量を増加に転じさせることを管理方策として0.8Fcurrentを管理基準として2021年ABCを算出した
- 年々の再生産の成功がその年の資源量に影響するため、再生産の場となる沿岸の産卵場を維持することが必要である
- 直近の資源情報に基づき、翌年の適切な漁獲量を算定することに重点を置くのが妥当である
執筆者：入路光雄･安田十也･亘 真吾･渡邊千夏子・宇田川美穂･渡井幹雄・木下順二
資源評価は毎年更新されます。