令和2年度資源評価報告書（ダイジェスト版）
| 標準和名 | ニギス |  |
| 学名 | Glossanodon semifasciatus | |
| 系群名 | 日本海系群 | |
| 担当水研 | 水産資源研究所 |
生物学的特性
| 寿命： | 5～6歳 |
| 成熟開始年齢： | 1.5歳（50％）、3歳（100％） |
| 産卵期・産卵場： | 周年（盛期は春季と秋季）、新潟県沖や石川県沖、山陰沖 |
| 食性： | ツノナシオキアミなどの浮遊性小型甲殻類およびキュウリエソ |
| 捕食者： | ヒラメ、ソウハチ、ムシガレイ、アカムツ、マダラ、アブラツノザメ等 |
漁業の特徴
本系群は、青森県から島根県に至る日本海沿岸において、主として沖合底びき網（沖底）と小型底びき網（小底）で漁獲される。
我が国のニギスの全漁獲量の70％～80％が日本海沿岸で水揚げされ、多い順に石川県、島根県、新潟県の3県が日本海沿岸の漁獲量の80％を占める。
漁獲の動向
漁獲量は、1975年～1983年は1万トン前後で推移したが、1984年から大きく減少した。
1991年以降は一度増加に転じたものの再び減少し、2019年は1975年以降の最低値となる2,016トンであった。
資源評価法
日本海全域における沖底（1そうびき）の単位努力量あたり漁獲量（CPUE）に基づく資源密度指数を資源量指標値として資源状態を判断した。
また、参考として漁場ごとの資源量指標値（資源密度指数またはCPUE）の推移を示した。
資源状態
沖底の資源密度指数は1977年の87.5をピークに減少し、1986年に25.7となった後、1997年には51.5まで増加した。
その後は増減を繰り返しながら緩やかに減少していたが、2014年以降は増加傾向となっている。
資源水準は資源密度指数の最高値の近傍90と0を3等分し、60以上を高位、30～60を中位、30未満を低位とした。
2019年の資源密度指数は37.5であり、水準は中位と判断した。
また、直近5年間（2015年～2019年）における資源密度指数の推移から、動向は増加と判断した。
管理方策
1987年以降、資源量指標値は増減を繰り返しつつも中位水準内で安定して推移している。
資源を持続的に利用するため、資源水準および資源量指標値の変動傾向に合わせた漁獲を行うことを管理方策とし、2021年のABCを算定した。
本種は鮮度低下が早く安価なため混獲時に投棄されている実態があり、混獲軽減漁具や鮮度保持技術の普及が必要である。
小型魚の混獲も多く、体長別の獲り分けや若齢資源への影響の検討も重要である。
また、本系群は漁場ごとに資源量指標値の変動傾向が異なる。
日本海中部は長期的に増加、西部は減少～横ばい、北部は短期的に減少している。
今後、各漁場の資源特性とともに適切な管理方策を検討する必要がある。
| 管理基準 | Target／Limit | 2021年ABC （百トン） |
漁獲割合 （％） |
F値 （現状のF値 からの増減％） |
| 0.9・Cave3-yr・1.06 | Target | 16 | － | － |
| Limit | 20 | － | － |
- Limitは、管理基準の下で許容される最大レベルの漁獲量である。Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、管理基準の下で資源の回復が期待される漁獲量
- ABC算定規則2-1)により、ABClimit＝δ1・Ct・γ1、ABCtarget＝ABClimit・αで計算
- δ1は0.9（中位水準の推奨値）、Ctは2017年～2019年の平均漁獲量(Cave3-yr)、係数αは標準値0.8とした
- γ1は、γ1＝1＋k(b/I)で計算し、kは係数（標準値の1.0）、b(2.08)とI(37.1)は資源量指標値の傾きと平均値（2017年～2019年）
資源評価のまとめ
- 資源水準は中位、動向は増加
- 資源密度指数は長期的に緩やかに減少していたが、2014年以降は増加傾向
管理方策のまとめ
- 資源の持続的利用を図るため資源水準および資源量指標値の変動傾向に合わせた漁獲を行うことを管理方策とした
- 投棄防止のための漁具や鮮度保持技術の普及が必要
- 小型魚保護に向けた獲り分けや小型魚混獲による若齢資源への影響の検討が重要
- 漁場ごとに資源量指標値の動向が異なり、今後資源特性と適切な管理方策の検討が必要
執筆者：吉川 茜・藤原邦浩・佐久間啓
資源評価は毎年更新されます。