令和2年度資源評価報告書（ダイジェスト版）

標準和名	キチジ
学名	Sebastolobus macrochir
海域名	道東・道南
担当水研	水産資源研究所

生物学的特性

寿命：	太平洋北部海域では20歳程度だが、本海域については不明
成熟開始年齢：	雌では16cm（3歳～5歳；一部）、24cm（6歳～10歳；50％）。ただし、卓越年級では成長が異なる
産卵期・産卵場：	3月～5月、恵山海丘、襟裳岬沖、釧路沖、落石沖の山状地形の周辺（水深400m～850m）
食性：	クモヒトデ類、ヨコエビ類、オキアミ類、エビ・カニ類、多毛類、魚類など
捕食者：	マダラ、アブラガレイ、キチジ（共食い）

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漁業の特徴

沖合底びき網漁業（沖底）のほか、えびこぎ網（旧エビ桁網）や刺網などの沿岸漁業により周年漁獲される。

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漁獲の動向

1985年に1,000トンを超えていた漁獲量は、1997年に500トンを割り込み、それ以降は概ね200トン～300トン程度にまで減少した。 2012年以降はやや増加して302トン～399トンで推移しており、2019年は376トンとなった。 1980年代末以降、沿岸漁業の漁獲量が沖底の漁獲量を上回っていたが、2013年以降は同程度となり、2016年以降は再び沿岸漁業が上回った。 2019年は沖底で134トン、沿岸漁業で242トンとなった。漁場別に見ると、道南よりも道東で漁獲量が多い。

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資源評価法

沿岸漁業のキチジに対する漁獲努力量の把握が困難なことから、漁獲量の経年変化から資源水準を判断した。 1999年～2020年には、夏季（6月～8月）に水深200m～1,000mの北海道太平洋沖合域において、底魚を対象とした底魚類共同資源調査（着底トロール調査）が実施されており、この調査結果により推定されたキチジの分布密度を資源量指標値とし、資源動向の判断に用いた。また、漁獲物の体長組成も資源評価の参考とした。

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資源状態

近年の漁獲物の体長組成は、概ね体長18cm以下の小型個体が主体となっており、2019年も同様の傾向がみられた。漁獲物は50％成熟体長とされる24cmより小さいものが大部分を占め、小型魚に高い漁獲圧がかかり、資源の再生産が阻害されている可能性が高い。資源水準は、各海域の漁業種類別の漁獲量データが揃う1986年～2019年の漁獲量の最高値～最低値を3等分し、高位、中位、低位とし、2019年の漁獲量から低位と判断した。資源動向は最近5年間（2016年～2020年）の調査船調査による分布密度推定値の推移に基づき横ばいと判断した。

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管理方策

漁獲量と資源量指標値（調査結果に基づく分布密度推定値）が使用できることから、資源水準および資源量指標値の変動傾向に合わせて漁獲を行うことを管理方策としてABCを算定した。資源の状態に合わせた漁獲により親魚量を維持しつつ、小型魚が成熟するまでとり残すことによって再生産に繋げることが、資源状態の改善に働くと期待される。

管理基準	Target／Limit	2021年ABC （トン）	漁獲割合（％）	F値（現状のF値からの増減％）
0.7･Cave3-yr･0.96	Target	190	－	－
0.7･Cave3-yr･0.96	Limit	230	－	－

ABC算定規則2-1)により、ABClimit＝δ₁・Ct・γ₁、ABCtarget＝ABClimit・αで計算した
Limitは、管理基準の下で許容される最大レベルの漁獲量、Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、管理基準の下でより安定的な資源の回復が期待される漁獲量
δ₁には0.7（低位水準における推奨値）、αには標準値0.8を用いた
γ₁(0.96)は、γ₁＝1＋k(b/I)で計算した。Kは標準値の1.0とし、b(-47.6)とI(1,182)は資源量指標値の傾きと平均値（直近3年間（2018年～2020年））である
CtにはCave3-yr（2017年～2019年の平均漁獲量347トン）を用いた
ABCは、10トン未満を四捨五入した

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資源評価のまとめ

漁獲量の推移から資源水準を判断し、調査船調査による分布密度推定値の推移から資源動向を判断した
資源水準は低位、動向は横ばい

管理方策のまとめ

資源水準および資源量指標値の変動傾向に合わせて漁獲を行うことを管理方策としてABCを算定した
資源の状態に合わせた漁獲により親魚量を維持しつつ、小型魚が成熟するまでとり残すことによって再生産に繋げることが、資源状態の改善に働くと期待される

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執筆者：濱津友紀・河村眞美・境　磨

資源評価は毎年更新されます。