令和2年度資源評価報告書(ダイジェスト版)
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標準和名
サワラ
学名
Scomberomorus niphonius
系群名
東シナ海系群
担当水研
水産資源研究所
生物学的特性
寿命:
6歳程度
成熟開始年齢:
1歳(一部)、2歳(大部分)
産卵期・産卵場:
3月~6月、東シナ海、黄海
食性:
生活史を通じ魚食性が強い
捕食者:
不明
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漁業の特徴
1980年代には東シナ海において主に大中型まき網(まき網)により多獲していたが、1990年代に入ると漁獲量は急減した。 2001年に日本海での漁獲が初めて東シナ海を上回ると、その後は日本海での漁獲の割合が増加を続け、2015年以降では約8割を日本海での漁獲が占めている。 我が国による漁獲よりも、韓国や中国による漁獲がはるかに多い。
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漁獲の動向
我が国の漁獲量は、1984年~1991年には1.7万~4.5万トンで推移したが、1992年に1.0万トンを下回り、1997年には822トンまで落ち込んだ。 1998年以降に漁獲量は増加し、2019年は1.0万トンであった。 韓国の2019年の漁獲量は3.8万トンであった。 中国の漁獲量は1990年代後半に50万トンに達し、2016年~2018年は30万トン台であった。 中国の漁獲量の中にはサワラ以外のサワラ類が含まれる可能性があるが、その程度は不明である。
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資源評価法
資源水準は、過去36年間(1984年~2019年)における日本と韓国の合計漁獲量に基づいて判断した。 東シナ海と日本海における漁業種類の違いと経年的な漁獲海域の変化を考慮して、東シナ海ではまき網の単位努力量当たり漁獲量(CPUE、kg/網)、日本海では大型定置網のCPUE(トン/統)を資源量指標値として使用した。 資源動向は、2つの海域の資源量指標値を併せて総合的に判断した。
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資源状態
資源水準は、日本と韓国の合計漁獲量の最大値と最小値の間を3等分し、4.0万トンを高位と中位、2.5万トンを中位と低位を区分する基準値とした。 2019年における日本と韓国の合計漁獲量は4.8万トンであったことから、資源水準は高位と判断した。 資源動向は、直近5年間(2015年~2019年)では東シナ海は横ばい、日本海は減少傾向だった。 全体の漁獲量に占める割合は日本海が高いことから、系群全体の動向としては減少と判断した。
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管理方策
日本に比べて韓国と中国の漁獲量がはるかに多い現状で、日本のみで資源管理を行っても管理の効果が薄い可能性はあるが、資源水準および東シナ海と日本海における資源量指標値の変動傾向に合わせて漁獲を行うことを管理目標とし、海域ごとのABCを算定した上で、これらの合計値を本系群全体の2021年ABCとした。 本系群は東シナ海において韓国・中国等に主に漁獲されるため、資源評価、資源管理に当たっては各国間の協力が必要である。
管理基準
Target/Limit
2021年ABC
(百トン)
漁獲割合
(%)
F値
(現状のF値から
の増減%)
1.0・C2019
ECS
・1.24
1.0・C2019
JS
・0.95
Target
79
-
-
Limit
99
-
-
Limitは、管理基準の下で許容される最大レベルの漁獲量、Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、管理基準の下でより安定的な資源の増大または維持が期待される漁獲量
ABC算定規則2-1)によって、ABCはABClimit=δ
1
・Ct・γ
1
、ABCtarget=ABClimit・αで計算した
δ
1
には1.0(高位水準における推奨値)、αは標準値0.8を用いた
CtにはC2019
ECS
(2019年東シナ海漁獲量)とC2019
JS
(2019年日本海漁獲量)を用いた
γ
1
は、γ
1
=1+k(b/I)で計算した。kは標準値の1.0とし、b(東シナ海16.5、日本海-1.6)とI(東シナ海67.5、日本海30.5)は資源量指標値の傾きと平均値(直近3年間(2017年~2019年))である
ABCは日本の漁業に対する値
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資源評価のまとめ
資源水準は高位、動向は減少
日本と韓国の合計漁獲量より水準を、東シナ海と日本海の資源量指標値の推移から動向を判断した
管理方策のまとめ
資源水準および東シナ海と日本海の資源量指標値の変動傾向に合わせて漁獲することを管理目標とした
東シナ海と日本海の海域ごとのABCを算定し、これらの合計値を本系群全体の2021年ABCとした
東シナ海において韓国・中国等に主に漁獲されるため、資源評価、資源管理に当たっては各国間の協力が必要である
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執筆者:田邉智唯・髙橋素光・依田真里
資源評価は毎年更新されます。