令和2年度資源評価報告書（ダイジェスト版）
| 標準和名 | マガレイ |  |
| 学名 | Pleuronectes herzensteini | |
| 系群名 | 日本海系群 | |
| 担当水研 | 水産資源研究所 |
生物学的特性
| 寿命： | 雄7歳、雌10歳 |
| 成熟開始年齢： | 雄2歳（割合不明）、3歳（100％）、雌3歳（70％）、4歳（100％） |
| 産卵期・産卵場： | 青森県沖2月～4月、新潟県沿岸2月～5月（盛期は3月～4月） |
| 食性： | 多毛類、二枚貝、小型甲殻類 |
| 捕食者： | 不明 |
漁業の特徴
本系群は底びき網、刺網および定置網によって漁獲される。
刺網および定置網による漁獲は産卵期である2月～4月に集中しており、底びき網による漁獲は5月～6月、9月～10月に多い。
2019年の漁獲量の比率は、底びき網52％、刺網35％であった。
現在、各県で全長13cm～17cm未満の出荷あるいは採捕制限が行われている。
漁獲の動向
青森県～新潟県の統計がそろった1993年以降、漁獲量は1994年の787トンを最高に1998年から2008年までほぼ300トン前後の横ばいであった。
2012年以降減少傾向を示し、2019年の漁獲量は過去2番目に低い124トンだった。
また、2019年の県別の漁獲量の比率は、秋田県と山形県が高い。
本系群に対する主要な漁法である底びき網の漁獲努力量は、長期的には減少傾向にある。
資源評価法
本種は、いずれの漁法でも必ずしも主対象魚種ではなく、実質的な漁獲努力量の把握は困難である。
そのため、青森県～新潟県の4県が集計した漁獲量の経年変化から資源の水準・動向の判断を行った。
新潟県水産海洋研究所が同県東港沖で採集した1歳魚の分布密度の経年変化から調査海域の加入状況を推定した。
この密度は、2000年級群を除き、新潟県北部の板びき網による3歳魚の漁獲尾数と有意な関係にある。
資源状態
新潟県北部の1歳魚の分布密度から2018年級の加入は少ないと推定され、2021年漁獲対象となる資源は極めて少なくなることが見込まれた。
本系群では、系群全体で参照可能な漁獲統計は1993年以降に限られるものの、1971年～1992年における青森県未集計分は全体の10％程度であると考えられるため、1971年以降の漁獲量の推移から資源の水準・動向を判断した。
資源水準は1971年～2019年の漁獲量の最大値に近い1,200トンと0を3等分し、800トンおよび400トンをそれぞれ高位と中位、中位と低位の境界値とした。
2019年の漁獲量は124トンであり、水準は低位と判断した。
過去5年間（2015年～2019年）の漁獲量の推移から動向は減少と判断した。
管理方策
資源水準に合わせて漁獲を行うことを管理方策として2021年ABCを算出した。
なお、新潟県北部では漁獲対象資源が減少することが見込まれている。
資源を回復させるためには漁獲対象資源の保護にいっそう努め、親魚を増加させることが望まれる。
このため、産卵期に漁獲が集中する刺網、定置網も含めて、産卵期や産卵海域に着目した親魚の保護に努めることが求められる。
| 管理基準 | Target／Limit | 2021年ABC （トン） |
漁獲割合 （％） |
F値 （現状のF値 からの増減％） |
| 0.7・Cave3-yr・1.01 | Target | 70 | － | － |
| Limit | 90 | － | － |
- Limitは、管理基準の下で許容される最大レベルの漁獲量、Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、管理基準の下でより安定的な資源の増加が期待される漁獲量
- ABC算定規則2-2)によって、ABCはABClimit＝δ2・Ct・γ2、ABCtarget＝ABClimit･αで計算した
- δ2には0.7（低位水準における推奨値）、αは標準値0.8を用いた
- CtにはCave3-yr（2017年～2019年の平均漁獲量）を用いた
- γ2(1.01)は、γ2＝1＋k(b/I)で計算をした。kは標準値の0.5とし、b(1.37)とI(127)は漁獲量の傾きと平均値（直近3年間（2017年～2019年））である
- ABCは一の位を四捨五入した
資源評価のまとめ
- 資源水準は低位、動向は減少
- 新潟県北部に関しては、2018年級の加入は少ないと推定された
管理方策のまとめ
- 資源水準に合わせて漁獲を行うことを管理方策とし、2021年ABCを算出した
- 資源を回復させるためには、産卵期や産卵海域に着目した親魚の保護に努めることが求められる
執筆者：白川北斗、飯田真也、藤原邦浩、八木佑太、井関智明
資源評価は毎年更新されます。