平成30年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

[詳細版へ]
標準和名 マイワシ 魚種写真
学名 Sardinops melanostictus
系群名 対馬暖流系群
担当水研 西海区水産研究所

生物学的特性

寿命: 7歳程度
成熟開始年齢: 1歳(0~50%)、2歳(50~100%)、3歳以上(100%)、資源量により変動する。資源水準が高いと若齢魚の成熟率が低くなる傾向がある。2016年以降の成熟率は1歳で25%、2歳以上で100%
産卵期・産卵場: 産卵期は1~6月、産卵場は能登半島から九州西岸にかけての沿岸域
食性: 仔魚期は主に動物プランクトン、成魚期は動物プランクトン、植物プランクトン、魚卵など
捕食者: 大型魚類、海産ほ乳類、海鳥類など

▲このページのTOPへ

漁業の特徴

本系群の主漁場は日本海西南部海域であり、主にまき網漁業により漁獲される。 その他に、定置網、棒受網などで漁獲され、いずれも主な漁場は沿岸域である。 韓国などの外国漁船もマイワシを漁獲しているが、本系群との関係は不明である。

▲このページのTOPへ

漁獲の動向

漁獲量は1983~1991年には100万トン以上で推移した。 その後、漁獲量は急速に減少し、2001年には1,000トンまで落ち込んだが、2004年より増加に転じた。 2017年の漁獲量は前年6.2万トンより減少して5.4万トンであった。 海区別では、日本海西区で前年より増加した。 日本海北区および東シナ海区では前年より減少し、特に日本海北区で大きく減少した。 漁獲量の増減は資源量や漁獲努力量だけでなく漁場への来遊状況の影響も受ける。 韓国の漁獲量は前年5,000トンより増加して8,000トンであった。

▲このページのTOPへ

資源評価法

1960~2017年までの年齢別漁獲量に基づいたコホート解析により資源量を推定した。 2004~2017年の資源量指標値(産卵量、境港まき網の単位努力量当たり漁獲量(CPUE)、ただし2014年を除く)を用いて2017年の漁獲係数をチューニングした。 2014年は漁場となる沿岸域への来遊が極めて少なく、資源量指標値はその年の資源量および親魚量を指標していないと考えられるため用いなかった。

▲このページのTOPへ

資源状態

資源量は1988年に1,000万トンを超えたが、2001年には1万トンを下回った。 2004年以降から増加し、2017年の資源量は42.4万トンであった。 親魚量は2004~2011年にかけて増加したが、2012年以降横ばいとなり、2017年の親魚量は19.7万トンであった。 加入量は2004年から増加傾向が続いている。再生産成功率は、変動しながら横ばいで推移しており、近年では2016年に高い値を示した。 再生産関係より、良好な環境でも高い加入が期待できない閾値と考えられる親魚量10万トンをBlimitとした。 また、過去最低水準の資源量推定値を参考にして、資源量5,000トンをBbanとした。 資源水準の高位と中位の境界は1980年代~1990年代前半が高位に相当するように親魚量100万トンとした。 中位と低位の境界はBlimitとした。 2017年の親魚量、資源量はBlimit、Bbanを上回っており、資源水準は中位、動向は直近5年間(2013~2017年)の資源量の推移から増加と判断した。

▲このページのTOPへ

管理方策

2017年の資源量および親魚量はBbanおよびBlimitを上回っていることから、現状での親魚量を維持または増大させることを管理目標として2019年ABCを算定した。 現状の漁獲圧の維持(Fcurrent)と親魚量の維持(Fmed)の漁獲シナリオの下でABCを算定した。 Fcurrentは親魚量を長期間安定的に維持するための管理基準値(F40%SPR)と同等とみなせる。 FcurrentはFmedを下回っており、現状の漁獲圧の維持シナリオで漁獲した場合でも、将来の親魚量の増加が見込まれる。 Fmedで漁獲すれば親魚量の維持が見込まれる。
資源量(2019)=711千トンを仮定、 親魚量(2017)=197千トン、 Blimit=100千トン
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target
/Limit
2019年
ABC
(千トン)
漁獲割合
(%)
F値
(現状の
F値からの
増減%)
2024年の
親魚量
(千トン)
(80%区間)
確率評価(%)
2024年に
2017年親魚量を
維持
2024年に
Blimitを
維持
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent
≒F40%SPR)
Target 116 16 0.25
(-20%)
835
(329~1480)
99 100
Limit 140 20 0.31
(±0%)
645
(241~1218)
94 100
親魚量の維持
(Fmed≒F30%SPR)
Target 155 22 0.35
(+12%)
552
(190~999)
89 99
Limit 186 26 0.44
(+40%)
386
(144~749)
78 97
定義
  • Limitは各漁獲シナリオの下で許容される最大のF(漁獲係数)値による漁獲量、Targetは資源変動やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下で、より安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量
  • Ftarget=αFlimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • Fcurrentは2013~2017年のFの平均値
  • F値は各年齢の平均値
  • Fmedは不確実性の高い最近年(2017年)を除く、2007~2016年の再生産成功率の中央値(RPSmed=25.2尾/kg)に対応する漁獲係数
  • 漁獲割合は2019年の漁獲量/資源量
  • 漁獲シナリオにある「親魚量の維持」は中長期的に安定する親魚量の維持
  • 2018年以降の加入量は、2007~2016年の再生産成功率の中央値(RPSmed=25.2尾/kg)に親魚量を乗じて求めた
コメント
  • 本系群のABC算定には規則1-1)-(1)を用いた
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「大韓民国及び中華人民共和国等と我が国の水域にまたがって分布し、大韓民国及び中華人民共和国等においても採捕が行われていることから、関係国との協調した管理に向けて取り組みつつ、資源の維持若しくは増大することを基本に、我が国水域への来遊量の年変動も配慮しながら、管理を行う」とされている

▲このページのTOPへ

資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

▲このページのTOPへ

期待される管理効果

漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測:設定した加入量条件のもとでは、Fcurrentで漁獲を続ければ資源量は増加する。 Fmedでは、2019年以降ほぼ横ばいで推移する。

▲このページのTOPへ

将来予測シミュレーション

加入量変動の不確実性を考慮した検討:加入量変動が親魚量に与える影響を見るために、2018年以降の再生産成功率を過去(1960~2017年)の変動を考慮し仮定値(25.2尾/kg)の周りで変動させ、Fcurrent、Fmedのシナリオについて1,000回のシミュレーションを行った。 Fcurrentでは、5年後に2017年の親魚量を維持する確率、Blimitを維持する確率ともに94%以上であった。 Fmedでは2024年に2017年の親魚量を維持する確率が78%以上、Blimitを維持する確率は97%以上となった。

▲このページのTOPへ

資源変動と海洋環境との関係

マイワシの資源変動については海洋環境変動との関係が指摘されている。 対馬暖流域においては、再生産成功率の対数(lnRPS)の変動と、冬季のモンスーンインデックス(MOI:イルクーツクと根室の海面気圧差、季節風の強さの指標)、北極振動(AO:冬季北半球の大気循環の変動パターン)の指数との間に相関関係が認められている。 例外もあるが、AOについては正負を逆にした場合にlnRPSの動向と同調する傾向がみられる。 これらの関係から、季節風の強さや水温などの環境要因がマイワシの加入に影響していると考えられている。

▲このページのTOPへ


執筆者:安田十也・黒田啓行・林 晃・依田真理・鈴木 圭・髙橋素光

資源評価は毎年更新されます。