平成30年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

[詳細版へ]
標準和名 マアジ 魚種写真
学名 Trachurus japonicus
系群名 太平洋系群
担当水研 中央水産研究所

生物学的特性

寿命: 5歳前後
成熟開始年齢: 1歳(50%)、2歳(100%)
産卵期・産卵場: 冬~初夏、東シナ海を主産卵場とする群と九州~本州中部沿岸で産卵する地先群があると考えられている
食性: 仔稚魚は動物プランクトン、幼魚以降は魚食性が強くなる
捕食者: 大型の魚類等

▲このページのTOPへ

漁業の特徴

まき網漁業による漁獲が約60%を占め、定置網による漁獲が約30%でこれに次いでいる。 日向灘、豊後水道、紀伊水道から熊野灘では春から秋までの漁獲が多く、相模湾では春が主体である。 これらの海域では春から0歳魚が、年初から1歳魚が漁獲される。 千葉県以北の海域では1歳魚以上の漁獲が多い。

▲このページのTOPへ

漁獲の動向

漁獲量は1982~1985年までは2万トン以下であったが、1986年に急増して3.7万トンとなり、1990年以降に再び増加して1993~1997年は7万~8万トンと高い水準で推移した。 1998年以降は減少に転じ、2015~2016年は2万トン以下と極めて低い水準であった。 2017年の漁獲量は2.4万トンと近年では好漁であった。 本系群の外国漁船による漁獲はない。

▲このページのTOPへ

資源評価法

1982年以降の年齢別漁獲尾数に基づいて、加入量指標値(2005~2017年)を用いてチューニングをしたコホート解析により年齢別資源尾数、資源量、漁獲係数を計算した。 自然死亡係数は、寿命との関係から0.5とした。

▲このページのTOPへ

資源状態

近年は資源量、親魚量、加入量のいずれも減少傾向にある。 2017年の資源量は4.3万トン、親魚量は2.4万トン、加入量は3.8億尾であった。 再生産成功率は2012年以降20尾/kgを下回る低い水準にあり、2017年は15.8尾/kgであった。 Blimitは少ない親魚量から加入量の多い年級が発生した1986年の親魚量(2.4万トン)とした。 水準は、高位と中位の境界を親魚量の最高値と最低値を3等分し4.7万トン、中位と低位の境界をBlimitとし、2017年の親魚量はわずかにBlimitを上回ったことからは中位と判断した。 動向は過去5年間(2013~2017年)の資源量の推移から減少と判断した。 2016年の加入が比較的良好であったため、低位水準から中位水準に移行したと考えられる。

▲このページのTOPへ

管理方策

現状の親魚量はわずかにBlimitを上回っているが、次年度以降Blimitを下回り低位になると見込まれることから親魚量をBlimit以上に維持することを管理目標とし、親魚量の増大の漁獲シナリオF40%SPRと0.75Fsusによる漁獲量をABCとして算定した。 2017年以降の加入量は、再生産成功率の過去5年平均(2012~2016年、14.3尾/kg)とし、その値に年々の親魚量を乗じた値とした。 再生産成功率に乗じる親魚量は過去最高の6.4万トンを上限とした。 5年後に親魚量がBlimit以下で維持するFsus、減少傾向を示すFcurrentのシナリオは算定漁獲量とした。
 
資源量(2019)=25千トンを仮定、 親魚量(2017)=24千トン、 Blimit=24千トン
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target
/Limit
2019年
ABC
(千トン)
漁獲割合
(%)
F値
(現状の
F値からの
増減%)
2024年の
親魚量
(千トン)
(80%区間)
確率評価(%)
2024年に
2017年親魚量を
維持
2024年に
Blimitを
維持
親魚量の増大
(F40%SPR)
Target 4.8 20 0.31
(-66%)
59.9
(45~78)
100 100
Limit 5.8 24 0.39
(-57%)
42.8
(32~56)
99 100
親魚量の増大
(0.75Fsus)
Target 5.9 24 0.40
(-56%)
41.1
(31~53)
96 99
Limit 7.1 29 0.50
(-45%)
26.8
(20~35)
38 44


2019年
算定
漁獲量
(千トン)





親魚量の増大
(F30%SPR)
Target 6.3 26 0.43
(-53%)
35.9
(27~47)
81 86
Limit 7.5 30 0.54
(-41%)
22.6
(17~30)
15 20
親魚量の維持
(Fsus)
Target 7.4 30 0.53
(-42%)
23.3
(17~30)
19 25
Limit 8.8 36 0.66
(-27%)
13.2
(10~17)
0 0
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Target 9.4 38 0.73
(-20%)
10.1
(8~13)
0 0
Limit 10.8 44 0.91
(±0%)
4.7
(4~6)
0 0
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値による漁獲量
  • Targetは、資源変動の可能性や誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量
  • Ftarget=αFlimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • Fcurrentは2015~2017年のFの平均値
  • 漁獲割合は2019年の漁獲量/資源量
  • F値は各年齢の単純平均値
  • 将来予測に用いた再生産成功率は2012~2016年の平均値(14.3尾/kg)
コメント
  • 本系群のABC算定には、規則1-1)-(1)を用いた
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「資源が減少傾向にあることから、減少に歯止めをかけることを基本方向として、管理を行う」とされている
  • 現状では親魚量がBlimitをわずかに上回っているものの次年度以降はBlimit以下に低下すると予測されることから、Blimit以上の水準を維持するため、親魚量の増大シナリオから得られる漁獲係数が望ましい

▲このページのTOPへ

資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

▲このページのTOPへ

期待される管理効果

漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測:設定した加入量の仮定のもとでは、F40%SPR、0.75Fsusのいずれも2020年以降漁獲量・資源量ともに増加する。

▲このページのTOPへ

将来予測シミュレーション

加入量変動の不確実性を考慮した検討:近年の再生産成功率の減少傾向を考慮し、2012~2016年の再生産成功率をリサンプリングして加入量を仮定し、それぞれの漁獲シナリオで漁獲した場合の親魚量の動向を予測した。 再生産成功率に乗じる親魚量は6.4万トンを上限とした。 5年後に親魚量がBlimit以上に維持される確率は、F40%SPRで100%、0.75Fsusで44%であった。 今後も加入量と再生産成功率の動向を注視し、将来予測に用いる再生産成功率の参照期間及び方法について検討する必要がある。

▲このページのTOPへ

資源変動と海洋環境との関係

北西太平洋において、小型浮魚類の資源は、気候変動に伴って数十年規模で周期的かつ劇的な変動を繰り返してきた。 マアジの資源変動様式は、カタクチイワシと相似しており、マイワシと逆の関係にある。

▲このページのTOPへ

執筆者:渡邊千夏子・由上龍嗣・上村泰洋・古市 生・井須小羊子

資源評価は毎年更新されます。