平成30年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 マサバ 魚種写真
学名 Scomber japonicus
系群名 太平洋系群
担当水研 中央水産研究所

生物学的特性

寿命: 7~8歳(最高11歳)
成熟開始年齢: 1970~1975年、2015~2017年は2歳(20%)、1976~1986年は2歳(30%)、2005~2014年は2歳(50%)など、年により異なる
産卵期・産卵場: 1~6月、主に伊豆諸島周辺海域(3~6月)、他に足摺岬、室戸岬周辺や紀南などの太平洋南部沿岸域や東北海域
食性: 稚魚は動物プランクトン、幼魚以降はカタクチイワシなどの魚類やオキアミ類などの甲殻類、サルパ類など
捕食者: サメ類などの大型魚類、ミンククジラ

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漁業の特徴

主要漁業の漁場、漁期は次のとおりである。 大中型まき網は主に常磐~三陸北部海域で9~翌年2月を中心にほぼ周年操業する。 道東海域では2012年以降に漁場が形成されている。 中型まき網は千葉県以西の太平洋沿岸各地で周年操業する。 たもすくいおよび棒受網は1~6月の伊豆諸島海域に越冬、産卵で集群する親魚群を主に漁獲する。 定置網は各地で行われ、三陸沿岸での漁獲が多い。

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漁獲の動向

我が国の漁獲量は1978年漁期(7~翌年6月)に121万トンのピークに達した後減少し、1990、1991年漁期に3万トン程度まで落ち込んだ。 その後は増減を繰り返していたが2013年漁期以降に増加し、2017年漁期は33.1万トンであった。 北西太平洋公海域等で2017年に中国が15.4万トン、ロシアが5.3万トンのマサバを漁獲したと推定された。 系群全体の漁獲量は2017年漁期に53.8万トンであった。

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資源評価法

1970~2017年の資源量を、7~翌年6月の漁期を年単位とする年齢別漁獲尾数を使ったコホート解析により推定した。 最近年の漁獲係数は、加入量および親魚量を反映すると考えられる4系列の指標値を用いてチューニングを行って推定した。 自然死亡係数は0.4とした。

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資源状態

資源量は1970年代には300万トン以上の高い水準であったが、1980~1990年代に減少し、2001年には15万トンまで落ち込んだ。 その後、2004年の高い加入量と漁獲圧低下により増加し、2013年の極めて高い加入量により2013年は305万トンとなり、その後もさらに増加し2017年は509万トンであった。 親魚量は2012年に29.2万トンに増加し、その後も増加傾向を示し、2017年は90.6万トンであった。 親魚量が45万トンを下回ると再生産成功率の年変動が大きく、加入量水準が低下していたことから、親魚量45万トンをBlimitとした。 資源水準は、高位と中位の境界を親魚量の最高~Blimitの中間値の92.5万トンとし、中位と低位の境界をBlimitとした。 2017年親魚量はBlimitを上回っており、資源水準は中位、動向は過去5年間(2013~2017年)の親魚量の推移から増加と判断した。

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管理方策

2017年の親魚量(90.6万トン)はBlimitを上回っていることから、加入量の増加と一定水準以上の維持を図るために親魚量をBlimit以上に維持することを管理目標として2019年ABCを算定した。 漁獲シナリオとして、親魚量の増大(F40%SPR)、現状の漁獲圧の維持(Fcurrent)、親魚量の維持(Fmed)に基づいて算定した。2019年以降の加入量はHockey-stick型の再生産関係に従うとした。 Fmedは中長期的に安定する親魚量の維持を図る基準値であり、1970~2016年のRPS中央値(7.5尾/kg)に対応するFとした。
資源量(2019)=7,058千トンを仮定、 親魚量(2017)=906千トン、 Blimit=450千トン
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target
/Limit
2019年
漁期ABC
(千トン)
漁獲割合
(%)
F値
(現状の
F値からの
増減%)
2024年の
親魚量
(千トン)
(80%区間)
確率評価(%)
2024年に
2017年
親魚量を
維持
2024年に
Blimitを
維持
親魚量の増大
(F40%SPR)
Target 659 9 0.22
(-42%)
1,851
(1,192~2,796)
100 100
Limit 796 11 0.28
(-27%)
1,574
(971~2,405)
95 100
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Target 859 12 0.30
(-20%)
1,464
(882~2,268)
89 100
Limit 1,027 15 0.38
(±0%)
1,215
(695~1,919)
68 100
親魚量の維持
(Fmed)
Target 879 12 0.31
(-18%)
1,431
(855~2,216)
87 100
Limit 1,049 15 0.39
(+3%)
1,185
(673~1,868)
63 100
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量、Targetは、資源変動の可能性や誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量
  • Ftarget=αFlimitとし、係数αは標準値0.8を用いた
  • Fcurrentは2015~2017年のFの平均値
  • 漁獲割合は2019年漁期漁獲量/資源量
  • F値は各年齢の平均値
  • 2019年以降の加入量は、Hockey-stick型の再生産関係を用いて予測した
  • 漁獲シナリオにある「親魚量の維持」は中長期的に安定する親魚量での維持を図る漁獲シナリオである
  • 2019年漁期は2019年7月~2020年6月
コメント
  • 本系群のABC算定には規則1-1)-(1)を用いた
  • 本系群は毎年の再生産成功率の変動が大きいため将来予測の不確実性が大きい
  • 外国漁船による漁獲を考慮しているが、漁獲物の内容について十分な情報が得られていないため、多くの仮定を置いた資源評価となっており、資源量推定値等の不確実性が大きい。このため、安全を見込んだシナリオが選択されることが望ましく、早急に外国漁船の適正な管理にも取り組むべきである
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「近年の海洋環境が当該資源の増大に不適な状態にあると認められないことから、資源を維持若しくは増大することを基本方向として管理を行うものとし、資源管理計画に基づく取組の推進を図るものとする。なお、本資源は北西太平洋公海において外国漁船によっても採捕されていることから、平成27年7月に設立された北太平洋漁業委員会(NPFC)等を通じて、外国漁船の適切な管理に向けた一層の取組を推進する。」とされており、親魚量の維持シナリオから得られる漁獲係数以下の漁獲係数であれば、資源を維持または増大させることができると考えられる

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測:加入量をHockey-stick型の再生産関係を用いて予測した。 資源量は、2018年の加入量が高いため2018、2019年に一時的に増加するが、2020年以降はすべてのシナリオで減少が見込まれる。漁獲量は、2018年の加入量が高いため2021年までは高い値を維持するが、2022年以降はすべてのシナリオで減少が見込まれる。

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将来予測シミュレーション

加入量変動の不確実性を考慮した検討:Hockey-stick型の再生産関係を用いて各年の予測親魚量から推定される加入量に、過去の実績から無作為に抽出された残差を与える1,000回の試行で検討した。 5年後にBlimitを維持する確率はすべてのシナリオで100%であり、2017年親魚量を維持する確率はF40%SPRで100%であったが、Fcurrentで68%、Fmedで63%とやや低かった。

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資源変動と海洋環境との関係

加入量の多い年は主産卵期である4月ふ化個体の割合が高く、少ない年は低いという特性がみられ、主に4月ふ化個体の生残率によって加入量が決定すると考えられる。 早期の4月の産卵は、後期(5~6月)に比べて親魚の組成や経験水温からみて良質卵となり、ブルーミング時期と一致するなど仔稚魚の生残に有利である。 その一方で、4月は初期生残率に大きく影響するふ化後の経験環境の年変化が大きい。 経験水温が産卵場水温と同様の18℃程度では、成長率は低く、変態が遅れ生残率は低くなるが、速やかに黒潮付近の20℃程度の水温で移送されると、成長率は高くなり、高い加入量となることが示唆されている。

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執筆者:由上龍嗣・西嶋翔太・井須小羊子・渡邊千夏子・上村泰洋・古市 生

資源評価は毎年更新されます。