平成30年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 マサバ 魚種写真
学名 Scomber japonicus
系群名 対馬暖流系群
担当水研 西海区水産研究所

生物学的特性

寿命: 6歳程度
成熟開始年齢: 1歳(60%)、2歳(85%)、3歳(100%)
産卵期・産卵場: 1~6月、東シナ海南部の中国沿岸~東シナ海中部、朝鮮半島沿岸、九州・山陰沿岸
食性: 成魚は主にオキアミ類、アミ類、橈脚類などの浮遊性甲殻類、カタクチイワシなど小型魚類
捕食者: 幼稚魚は魚食性の魚類

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漁業の特徴

東シナ海・黄海・日本海のマサバ漁獲の大部分は大中型まき網漁業及び中・小型まき網漁業による。 主漁場は東シナ海、韓国沿岸、九州北西岸、日本海西部であるが、2011年以降、九州北西岸及び日本海西部での漁獲が多い。

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漁獲の動向

我が国の漁獲量は、1970年代後半には30万トン前後であったが、1990年代初めに15万トンほどまで減少した。 その後、1996年に41万トンにまで増加したが、2000年以降、概ね8万~12万トンの低い水準で推移している。 近年の漁獲量は、2013年に6万トンと1973年以降で最も少なかったが、その後増加傾向にあり、2017年は11万トンだった。 韓国は2017年に10万トン、中国は2016年に50万トン(さば類)を漁獲した。 中国のマサバとゴマサバの魚種別の漁獲量は不明である。

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資源評価法

1973年以降の日・韓の年齢別・年別漁獲尾数に基づくコホート解析により、資源量を計算した。 2003年以降の大中型まき網の年齢別資源量指標値を用いてチューニングを行った。 中国による漁獲は考慮していない。

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資源状態

資源量は1989年まで100万トン前後で比較的安定していたが、2000年以降は50万トン前後に留まっている。 2014年以降、資源量は増加傾向にあり、2017年の資源量は59万トンと推定された。 親魚量は、1997年に急減した後、低水準であったが、2015年以降、増加傾向にあり、2017年は19万トンと推定された。 漁獲割合は2014年以降やや低下し、2017年は36%であった。 再生産成功率は変動が大きいが、近年では2014年に高く、2017年は平均的な水準だった。 親魚量と加入量の間に正の相関があることから、資源回復の閾値(Blimit)を1997年の親魚量水準(25万トン)とした。 資源水準は過去45年間の資源量の上位1/3を高位、Blimitを中位と低位の境界とした。 2017年の親魚量はBlimitを下回っているため、資源水準は低位、動向は直近5年間(2013~2017年)の資源量の推移から増加と判断した。

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管理方策

2017年の親魚量はBlimitを下回っており、親魚量の回復を図ることを管理目標として、F30%SPR、Frec(Fmedを2017年親魚量とBlimitの比で引き下げたF)、Fcurrentによる漁獲シナリオを設定し、ABCを算出した。 またFmedによる漁獲量を算定漁獲量として算出した。 2024年までの将来予測の結果では、F30%SPR、Frec、Fcurrentにおける親魚量は、2024年までにBlimit以上に回復し、漁獲量も増加した。 また、0歳魚の漁獲係数を小さくすると、2021年以降の漁獲量は変わらないものの、2024年における親魚量は増加した。 このことから若齢魚に対する漁獲圧の緩和は、本系群の資源量を増大させ、単位漁獲努力量あたりの漁獲量の増加などにつながることが期待される。
 
資源量(2019年漁期)=812~896千トンを仮定(漁獲シナリオにより異なる)、 親魚量(2017)=189千トン、 Blimit=247千トン
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target
/Limit
2019年
漁期ABC
(千トン)
漁獲割合
(%)
F値
(現状の
F値からの
増減%)
2024年の
親魚量
(千トン)
(80%区間)
確率評価(%)
2024年に
2017年親魚量を
維持
2024年に
Blimitを
維持
親魚量の増大
(F30%SPR)
Target 199 22 0.36
(-48%)
735
(528~921)
100 100
Limit 234 27 0.45
(-35%)
617
(416~794)
100 99
親魚量の回復
(B/Blimit×Fmed)
(Frec)
Target 252 29 0.51
(-27%)
560
(367~717)
100 99
Limit 290 34 0.63
(-9%)
454
(223~576)
95 87
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Target 268 31 0.56
(-20%)
514
(321~679)
99 97
Limit 306 37 0.70
(±0%)
411
(174~508)
88 76


2019年
漁期算定
漁獲量
(千トン)





親魚量の維持
(Fmed)
Target 297 35 0.66
(-5%)
434
(203~536)
93 82
Limit 335 41 0.83
(+19%)
269
(106~379)
59 39
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量、Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量
  • Ftarget=αFlimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • Fcurrentは2015~2017年のFの平均値
  • Fmedは、不確実性の高い最近年(2017年)を除く1990~2016年の再生産成功率の中央値(RPSmed:6.8尾/kg)に対応する漁獲係数
  • F値は各年齢の平均値
  • 2019年漁期資源量は2019年1月と2020年1月時点の資源量推定値の平均(漁獲シナリオにより異なる)
  • 漁獲割合は2019年漁期漁獲量/2019年漁期資源量
  • 漁獲シナリオにある「親魚量の維持」は、中長期的に安定する親魚量での維持を指す
  • 2018年以降の加入量は、1990~2016年の再生産成功率中央値を使用して予測した
  • 2019年漁期は2019年7月~2020年6月
コメント
  • 本系群のABC算定には、規則1-1)-(2)を用いた
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「大韓民国及び中華人民共和国等と我が国の水域にまたがって分布し、外国漁船によっても採捕が行われていて我が国のみの管理では限界があることから、関係国との協調した管理に向けて取り組みつつ、当面は資源を減少させないようにすることを基本に、我が国水域への来遊量の年変動も配慮しながら、管理を行うものとする。また、資源管理計画に基づく取組の推進を図るものとする。」とされており、親魚量の維持シナリオから得られる漁獲係数未満であれば、資源回復を目的とした資源管理計画に沿って資源を増大させることができると考えられる
  • 韓国による漁獲は考慮したが、中国による漁獲は考慮していない

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測:F30%SPRでは、2019年に漁獲量が減少するものの、その後の資源量の増加に伴い、漁獲量も増加に転じる。 Frec、Fcurrentでは資源量、漁獲量とも緩やかに増加する。

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将来予測シミュレーション

加入量変動の不確実性を考慮した検討:2018~2029年の再生産成功率を仮定値(6.8尾/kg)の周りで変動させ、F30%SPR、Frec、Fcurrentの各シナリオについて、1,000回のシミュレーションを行った。 F30%SPRでは、親魚量は増加傾向を示し、高い確率でBlimitを上回る。 Frecの場合、漁獲量、親魚量の平均値、下側10%とも緩やかに増加する。 Fcurrent では、2025年ごろまで漁獲量、親魚量ともに緩やかに増加したが、それ以降、平均値、下側10%とも横ばい傾向を示した。 2024年に親魚量がBlimitを上回る確率は、F30%SPRでは99%、Frecでは87%、Fcurrentでは76%である。

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資源変動と海洋環境との関係

再生産成功率の変動には、海洋環境が深く関わっていると考えられる。 再生産成功率の対数と親魚量に直線関係を当てはめ、直線からの残差を水温と比較した。 その残差と東シナ海(北緯29度30分、東経127度30分)の2月の海面水温(気象庁保有データ)には、負の相関がある。 水温に代表される海洋環境が、初期の生残に大きな影響を与えると想定されるが、詳細については不明な点が多く、影響の解明は今後の課題である。

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執筆者:黒田啓行・依田真里・安田十也・鈴木 圭・竹垣草世香・佐々千由紀・髙橋素光

資源評価は毎年更新されます。