平成30年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 スケトウダラ 魚種写真
学名 Gadus chalcogrammus
系群名 太平洋系群
担当水研 北海道区水産研究所

生物学的特性

寿命: 不明(10歳以上)
成熟開始年齢: 3歳(20%)、4歳(80%)、5歳(90%)、6歳(100%)
産卵期・産卵場: 12~翌年3月、盛期は1~2月、主に噴火湾周辺海域
食性: 主にオキアミ類や橈脚類をはじめとする浮遊性甲殻類、その他に小型魚類、イカ類、底生甲殻類、環形動物など
捕食者: マダラ、アブラガレイ、オクカジカ、イトヒキダラ、海獣類、共食い

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漁業の特徴

本系群は、沖合底びき網漁業(沖底)と刺網や定置網などの沿岸漁業で漁獲されている。 1980年代には東北太平洋での漁獲量も多かったが、近年の主漁場は北海道の渡島・胆振地方(襟裳以西)と十勝・釧路地方(道東)である。 襟裳以西では沿岸漁業が主体で、主漁期は10~翌年1月である。 道東では沖底が主体で、主漁期は9~11月である。 なお、千島列島南西海域ではロシアの大型トロール船が操業を行っている。

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漁獲の動向

漁獲量は1990年代まで概ね20万トン以上で推移していたが、2002年漁期(4~翌3月)には10.9万トンまで減少した。 2005~2014年漁期はTAC規制なども働き14.3万~17.5万トンの範囲で推移したが、近年3年間は減少し、2017年漁期は9.3万トンであった。 2014年漁期以降、道東の漁獲量が襟裳以西を上回っている。

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資源評価法

コホート解析により1981~2017年漁期の資源量を推定した。 チューニング指標値として使用した単位漁獲努力量当たり漁獲量(CPUE)は、北海道根拠の沖底の年齢別標準化CPUE(3~7歳)と、沿岸漁業のCPUE(刺網漁業の漁獲成績報告書から得られる月別CPUEの合算値、および同漁業の操業日誌に基づく標準化CPUE)である。 将来予測での加入量は2005~2014年漁期の再生産成功率の平均値に基づき算出した。 資源水準と動向は、1990年代以降の漁獲の主体である2歳以上の資源量で判断した。

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資源状態

資源量(0歳以上)には豊度の高い年級群が発生した後に増加する傾向が見られた。 2012年漁期以降、資源量は減少に転じ、2015年漁期以降は横ばい傾向にある。 2017年漁期は89.8万トンであった。 親魚量は2010~2012年漁期に急増したが、その後は減少した。 2017年漁期の親魚量は31.0万トンで、Blimit(豊度の高い年級群の発生が期待できる親魚量15.1万トン)を上回っている。 再生産成功率は、5億~54億尾の範囲で変動している加入量と類似した変動パターンを示した。 資源水準は2歳以上の資源量について100万トン以上であれば高位、100万トン未満50万トン以上であれば中位、50万トン未満であれば低位とした。 2017年漁期の2歳以上の資源量は77.5万トンであり、資源水準は中位と判断した。 また、その直近5年間(2013~2017年漁期)の推移から資源動向は横ばいと判断した。

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管理方策

本系群の資源量は大きく落ち込むことなく推移しており、1981年漁期以降、資源水準は常に中位以上にある。 2017年漁期の親魚量はBlimitを上回っていることから、親魚量をBlimit以上の適切な水準に維持することを管理目標とした。 2019年漁期のABCは、現状の漁獲圧の維持(Fcurrent)、親魚量の維持(Fsus)を漁獲シナリオとして算定した。 資源量は卓越年級群(加入尾数30億尾以上)を含む豊度の高い年級群が発生した後に増加する傾向にあり、今後も豊度の高い年級群が発生する親魚量を維持すれば本資源を持続的に利用可能と考えられるが、近年10年間に卓越年級群の発生が見られていないことに留意が必要である。
資源量(2019)=926千トンを仮定、 親魚量(2017)=310千トン、 Blimit=151千トン
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target
/Limit
2019年漁期
ABC
(千トン)
漁獲割合
(%)
F値
(現状の
F値からの
増減%)
2024年漁期の
親魚量
(千トン)
(80%区間)
確率評価(%)
2024年漁期に
2017年親魚量を
維持
2024年漁期に
Blimitを維持
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Target 81 9 0.23
(-20%)
488
(244~779)
78 100
Limit 99 11 0.29
(±0%)
443
(223~711)
74 100
親魚量の維持
(Fsus)
Target 149 16 0.47
(+61%)
318
(130~539)
46 86
Limit 178 19 0.59
(+102%)
264
(109~447)
31 77
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量、Targetは資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量である
  • Ftarget=αFlimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • F値はFcurrentの選択率において選択率が1となる年齢のF
  • Fcurrentは2013~2017年漁期(4~翌年3月)のFの平均
  • 漁獲割合は2019年漁期の漁獲量/資源量
  • 漁獲シナリオにある「親魚量の維持」は中長期的に安定する親魚量での維持を指し、Fsusは2005~2014年漁期の平均の再生産成功率(7.3尾/㎏)に対応するF
  • 2019年漁期は2019年4~翌年3月
  • 2018年漁期以降の加入量は、2005~2014年漁期の再生産成功率平均値を使用して予測した
コメント
  • 本系群のABC算定には、規則1-1)-(1)を用いた
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では「太平洋系群については、一定の親魚量の確保を通じ、豊度の高い年級群の発生により資源水準を維持することを基本方向として、漁獲動向及び加入動向に注意しつつ、管理を行うものとする」とされており、現状の漁獲圧を維持するシナリオ(Fcurrent)および親魚量を維持するシナリオ(Fsus)では、親魚量を中長期的にBlimit以上に維持できると考えられる

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

漁獲シナリオに対応したF値による親魚量及び漁獲量の予測:Fcurrentで漁獲した場合、漁獲量は2021年漁期まで横ばいで推移した後、増加する。 親魚量は常にBlimit以上となる。 Fsusで漁獲した場合には、2023年漁期以降、漁獲量は16万トン付近、親魚量も23万トン付近で横ばいとなる。

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将来予測シミュレーション

加入量変動の不確実性を考慮した検討:2005~2014年漁期の再生産成功率が重複を許してランダムに発生するという条件の下で、FcurrentとFsusで漁獲した場合の2019年漁期以降の親魚量と漁獲量を1,000回シミュレーションした。 2024年漁期の親魚量がBlimitを上回る確率は、Fcurrentで100%、Fsusで77~86%と、概ね高い値である。

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資源変動と海洋環境との関係

本系群の豊度の高い年級群が発生するためには、冬季の高水温が重要であることが指摘されている。 例えば、卓越年級群である1991、1995年級群や、豊度の高い2000年級群が産み出された冬季の噴火湾周辺海域は、例年よりも高水温下にあったのに対し、豊度の低い2010、2011年級群が産み出された冬季の噴火湾周辺海域は、例年よりも低水温下にあった。 また、10年規模の海洋環境変動にともない再生産構造が変化した可能性があり、親潮の勢力が強かった1980年代には、東北海域が本系群の成育場として機能することによって、加入量が比較的安定していたと考えられている。

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執筆者:境 磨・山下夕帆・石野光弘・千村昌之・山下紀生

資源評価は毎年更新されます。