平成30年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 ズワイガニ 魚種写真
学名 Chionoecetes opilio
系群名 太平洋北部系群
担当水研 東北区水産研究所

生物学的特性

寿命: 10歳以上
成熟開始年齢: 雄甲幅80mm(50%以上)、甲幅110mm以上(ほぼ100%)、雌甲幅68mm(50%以上)、甲幅76mm以上(ほぼ100%)
産卵期・産卵場: 不明
食性: 不明
捕食者: 成熟前の小型個体はマダラ、ゲンゲ類、カレイ類、ガンギエイ類、ヒトデ類など

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漁業の特徴

ズワイガニを選択的に漁獲する専業船は少なく、他の魚種とともに漁獲対象の一つとして扱われている。 1996年に農林水産省令に基づき規制が導入され、ズワイガニを漁獲可能な操業期間は12月10日から翌年3月31日で、雄では甲幅80mm未満、雌では外仔を持たない未成熟ガニの漁獲が禁止されている。 1990年代半ば以降には太平洋北部全体の漁獲量の大部分を福島県船が漁獲していたが、東日本大震災(震災)および原発事故による福島県船の操業休止・自粛により、2011年漁期(12~翌年3月)以降の福島県の漁獲はわずかとなっている。

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漁獲の動向

漁獲量は、1995年漁期に過去最高の353トンに達した後、2000年漁期に107トンまで減少した。 その後、2003年漁期、2008年漁期は漁獲量が多かったが、2010年漁期には159トンに減少した。 福島県の試験操業と併せた全県の合計漁獲量は2017年漁期には12.2トンと低い値であった。 2012~2017年漁期の漁獲割合は低い値に留まっており、2017年漁期は2.2%となった。

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資源評価法

1996年漁期以降の県別漁獲量データおよび1997年以降、毎年10~11月に実施している着底トロールによる底魚類資源量調査(青森県~茨城県沖、水深150~900m、2017年は計101地点、内40地点にてズワイガニを採集)から得た資源量(面積-密度法)を用いて資源評価を実施した。

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資源状態

漁獲対象資源量(以下、資源量)は1997~2007年漁期に496~1,777トンの間を変動した後、減少傾向となった。 2017年漁期は543トンとなった。 親魚量(雌の資源量)は、2012~2014年漁期後は低い水準となったが、2017年漁期後は213トンであった。 過少推定となっている可能性の高い2008年漁期を除く1997~2010年漁期後の親魚量の最低値である63トンをBlimitとした。 2017年漁期後の親魚量はBlimitを上回っている。 資源水準は、1997~2010年漁期の資源量の最高値を高位と中位の境界、最低値を中位と低位の境界として判断した。 2017年漁期の資源量は543トンであり、資源水準は中位と判断した。 また、直近5年間(2013~2017年)の資源量の推移から、動向は横ばいと判断した。

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管理方策

資源が中位水準、横ばいと判断されることから、適度な漁獲圧で漁獲することにより、親魚量を確保しつつ、資源を増加させることを管理目標とした。 現状の漁獲圧の維持(Fcurrent)をシナリオの一つとした。 近年の平均的な親魚量(平均親魚量)を維持するF(Fsus)を基準値とし、親魚量の維持(1.0Fsus)をシナリオの一つとした。 経験的に利用されている生物学的管理基準のF0.1を基準値とし適度な漁獲圧による漁獲(0.8F0.1)をシナリオの一つとして採用した。 なお、適度な漁獲圧による漁獲シナリオでは、最近および今後数年の加入は悪いと見込まれることから、0.8を乗じた。 また、2023年漁期まで資源量を一度も減少させることなく増大させるシナリオとして、1.0Fave3-yrをシナリオの一つとした。
資源量(2019)=703トンを仮定、 親魚量(2017)=213トン、 Blimit=63トン
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target
/Limit
2019年
漁期ABC
(雄,雌)
(トン)
漁獲割合
(雄,雌)
(%)
F値(雄,雌)
(現状のF値
からの増減%)
2023年漁期の
親魚量
(トン)
(80%区間)
確率評価(%)
2023年漁期に
平均親魚量
を維持
2023年漁期に
Blimit
を維持
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Target 10.1
(8.3,1.8)
1.5
(2.0,0.7)
0.015
(0.021,0.0069)
(-20%)
402
(269~597)
87 100
Limit 12.6
(10.3,2.3)
1.8
(2.4,0.8)
0.018
(0.026,0.009)
(0%)
400
(268~549)
86 100
親魚量の維持
(1.0Fsus)
Target 68.7
(38.4,30.3)
9.8
(9.1,10.7)
0.10
(0.1,0.12)
(+469%)
297
(202~465)
49 100
Limit 84.7
(47.4,37.4)
12.1
(11.1,13.2)
0.13
(0.13,0.15)
(+611%)
275
(168~400)
41 100
適度な
漁獲圧による漁獲
(0.8F0.1)
Target 70.0
(43.7,26.3)
10.0
(10.4,9.3)
0.10
(0.12,0.10)
(+480%)
310
(194~456)
52 100
Limit 86.3
(53.9,32.4)
12.3
(12.8,11.5)
0.14
(0.14,0.13)
(+664%)
290
(180~426)
46 100
資源量の増大
(1.0Fave3-yr)
Target 88.3
(49.4,38.9)
12.6
(11.7,13.8)
0.13
(0.13,0.16)
(643%)
270
(168~402)
43 100
Limit 109
(60.8,47.7)
15.4
(14.4,16.9)
0.17
(0.16,0.20)
(827%)
246
(154~373)
35 100
定義
  • Limitは各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量、Targetは資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量。Ftarget=α×Flimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • 現状のF値(Fcurrent)は2015~2017年漁期の平均値
  • ABC算定年の漁期当初の資源量を推定する際、全てのシナリオで2018年は2017年と同様のF値で漁獲すると仮定した
  • 適度な漁獲圧による漁獲シナリオでは、最近および今後数年の加入は悪いと見込まれることから、β1を0.8とした
  • Fave3-yrは震災前の平均的なF(F2006-2009、2008年漁期を除く)
  • 漁獲割合は、2019年漁期の漁獲量/2019年漁期当初の漁獲対象資源量
  • F値は漁獲割合から計算した
  • 2018~2020年の加入量は調査から得られた予測値、2021年以降の加入量は調査から得られた2016~2020年の平均値。加入量の不確実性を考慮した予測では、2016~2020年の加入量からリサンプリングした値を加入量として与えた
  • 2019年漁期は2019年12月~翌年3月
コメント
  • 本系群のABC算定には規則1-3)-(2)を用いた
  • 本系群の最近および今後数年の加入は悪いと見込まれることから、これらの状況を考慮した漁獲シナリオの設定が必要である
  • Flimit=(基準値か現状のF)×β1であるため、現状の漁獲圧の維持シナリオでは基準値をFcurrentとし、β1を1.0とした
  • 親魚量の維持シナリオは、近年の平均親魚量を維持するF(Fsus)を基準値とし、β1を1.0とした。2011年以降は漁獲圧が小さくなっているにも関わらず、資源量が明確に増加していないことから、2011年以降の親魚量は資源量を維持するには少ない可能性がある。そこで、比較的資源が安定していた震災以前の親魚量(2008年を除く2002~2010年)の平均値を平均親魚量とした
  • 適度な漁獲圧による漁獲シナリオでは、F0.1を基準値とした
  • 資源量の増大シナリオは、震災前の平均的なFであるFave3-yrを基準値とし、β1については加入量を2016~2020年の平均値とした時に2023年漁期まで資源量を一度も減少させることなく増大させる最大の値を探索的に求め(β1=1.0)1.0Fave3-yrとした
  • 親魚量は、漁期後の雌の漁獲対象資源量で示す
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「資源の維持もしくは増大を基本方向として、安定的な漁獲量を継続できるよう、管理を行うものとする」とされている

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

漁獲シナリオに対応したF値による資源量、親魚量及び漁獲量の予測:
加入量条件は、2018~2020年は調査から得られた予測値、2021年以降は2016~2020年の平均値とした。 Fcurrentでは資源量、親魚量、漁獲量は増加する。 1.0Fsusでは、資源量、漁獲量は増加を続け、親魚量は2019年漁期後まで減少するがその後は増加する。 0.8F0.1では資源量は増加を続ける。 親魚量は2019年漁期後まで減少するが、その後は増加する。 漁獲量は増加する。 1.0Fave3-yrでは、資源量、漁獲量は増加を続け、親魚量は2019年漁期後まで減少するがその後は増加する。

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将来予測シミュレーション

加入量変動の不確実性を考慮した検討:
2021年以降の加入量に2016~2020年の加入量からリサンプリングした値を仮定する1,000回のシミュレーションにより不確実性を検討した。 2023年漁期後に2002~2010年(2008年を除く)の平均親魚量を維持する確率は、Fcurrentで86%、1.0Fsusで41%、0.8F0.1で46%、1.0Fave3-yrで35%である。

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資源変動と海洋環境との関係

浮遊期幼生の生残、着底海域への移送等に海流や水塊配置などが大きく影響すると推測されるが、詳細については不明である。

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執筆者:柴田泰宙・成松庸二・鈴木勇人・森川英祐・時岡 駿・永尾次郎

資源評価は毎年更新されます。