平成30年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 スルメイカ 魚種写真
学名 Todarodes pacificus
系群名 冬季発生系群
担当水研 北海道区水産研究所

生物学的特性

寿命: 約1年
成熟開始年齢: 雄は約6~7ヶ月、雌は約7~8ヶ月以降
産卵期・産卵場: 12~翌年3月、東シナ海
食性: 沿岸では小型魚類、沖合では甲殻類
捕食者: 大型魚類、海産ほ乳類

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漁業の特徴

主にいか釣りによって漁獲されるが、近年、底びき網、定置網、まき網などによる漁獲量が増加しており、2017年の釣り以外の漁獲は全体の59%を占める。 本系群は我が国の他、韓国、中国、北朝鮮、ロシアによって漁獲されているが、日本海における中国と北朝鮮の漁獲の実態は不明である。 本資源評価での漁獲量は日本と韓国、および太平洋における中国とロシアを集計対象としている。

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漁獲の動向

系群全体の漁獲量は1980年代は低水準で推移し、1989年以降増加傾向に転じ、2011~2015年は概ね18万~29万トンで推移していた。 2016年以降は大きく減少しており、2017年漁期(4~翌年3月)の漁獲量は5.4万トンに減少した。 2017年の我が国による漁獲量は2.9万トン、韓国による漁獲量は2.4万トン、太平洋におけるロシアと中国による漁獲量はそれぞれ345トンと0トンであった。 2017年の我が国による漁獲量が系群全体に占める割合は55%であった。

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資源評価法

資源量指標値には、宮城県~北海道太平洋側主要港における7~12月の小型いか釣り船の単位努力量当たり漁獲量(CPUE)を標準化したものを用いた。 資源尾数は資源量指標値と比例関係にあると仮定して推定した。 親魚尾数は漁獲尾数および自然死亡係数(0.6/6ヶ月)から推定した。

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資源状態

資源量は1989年以降に増加しその後は概ね50万~100万トンで推移していたが、2015年以降減少に転じた。 加入量予測モデルによると2018年は15.3万トンで、過去最低であった1985年に次ぐ低い水準まで減少した。 再生産成功率は2002年以降低めの年が多くなっており、近年では2015、2016年と低い年が続き、2017年は高めであったが2018年は再び低下した。 Blimitはこれを下回ると高い再生産成功率があっても高い加入量が期待できなくなる親魚量(5.3億尾、16.4万トン)とした。 2018年漁期終了時の親魚尾数は1.8億尾(5.7万トン)でBlimitを下回っていると推定された。 資源水準は、1979~2018年の資源尾数を、最高値と最低値の間を3等分して、高位、中位、低位とした。 2018年の資源水準は低位、動向は直近5年間(2014~2018年)の資源尾数の推移から減少と判断した。

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管理方策

2018年漁期終了時の親魚量はBlimitを下回ると考えられたことから、親魚量をBlimit以上の水準に回復させることを管理目標とした。 漁獲シナリオとして、FrecとFrec5yrの2つを用いて2019年漁期ABCを算定した。 Frecは、中長期的に親魚量を維持することが期待できるFであるFmedを2018年漁期終了時の親魚量とBlimitの比(0.35)で引き下げたF(B/Blimit×Fmed)で、Frec5yrは5年後に親魚量がBlimitに回復することが期待できるFである。 これらのシナリオと併せて、現状の漁獲圧を維持するFcurrentでの算定漁獲量も検討した(FmedとFcurrentはほぼ等しいため合わせて示した)。
 
資源量(2019)=152千トンを仮定、 親魚量(2018)=57千トン、 Blimit=164千トン
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target
/Limit
2019年
漁期ABC
(千トン)
漁獲割合
(%)
F値
(現状の
F値からの
増減%)
2023年
漁期後の
親魚量
(千トン)
(80%区間)
確率評価(%)
2023年
漁期後に
2018年
漁期後の
親魚量を維持
2023年
漁期後に
Blimitを維持
親魚量の増大
(B/Blimit×Fmed)
(Frec)
Target 11 7 0.11
(-72%)
382
(113~742)
97 79
Limit 14 9 0.13
(-66%)
337
(101~656)
96 74
親魚量の増大
(5年でBlimitへ回復)
(Frec5yr)
Target 14 9 0.14
(-65%)
326
(97~637)
96 72
Limit 18 12 0.17
(-56%)
276
(82~532)
95 62


2019年
漁期算定
漁獲量
(千トン)





現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent≓Fmed)
Target 30 19 0.31
(-20%)
139
(41~270)
80 25
Limit 36 24 0.39
(±0%)
95
(28~184)
61 13
定義
  • Limitは各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量
  • Targetは資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量である
  • Ftarget=αFlimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • 直近の漁獲圧を示すFcurrentは2017年漁期のFとした
  • 漁獲シナリオにある「親魚量の増大」は中長期的に安定する親魚量を維持する漁獲圧であるFmedをB/Blimitで引き下げた漁獲シナリオ、および5年でBlimitに親魚量を回復させる漁獲シナリオである
  • Fmedは2002~2017年の再生産成功率の中央値に対応する漁獲係数
  • 漁獲割合は2019年漁期の漁獲量/資源量
  • 2018年漁期の漁獲量はFcurrentによる予測漁獲量(36千トン)とし、2023年漁期の親魚量および確率評価は加入量変動を考慮した100,000回のシミュレーションから算出した
  • 評価の対象とした5年後の親魚量は、2023年漁期終了時の予測親魚量
  • 2019年以降の加入量は、2002~2017年の再生産成功率中央値を使用して予測した
  • 漁期年は4~翌年3月
コメント
  • 本系群のABC算定には規則1-1)-(2)を用いた
  • 現状の漁獲圧は資源を悪化させる状況にはないと判断されるが、資源は低位・減少の局面にあり、漁獲による親魚量の減少に留意する必要がある
  • スルメイカの再生産にとって不適なレジームに移行したと判断された場合は、加入量予測に用いる再生産関係およびBlimitの値等を変更する必要がある
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では「本資源は減少傾向にあるが、これは海洋環境の変化に伴う再生産環境の悪化によると考えられ、短期的には減少傾向を緩和し、中期的には環境が改善された場合に資源を速やかに増大できるよう親魚量を確保することを基本方向とする」とされており、本系群の親魚量はBlimitを下回っていると推定されることから、親魚量の回復を図るよう管理をすべきと考えられる

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資源評価のまとめ

管理方策まとめ

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期待される管理効果

漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測:2002~2017年の再生産成功率の中央値と前年の親魚尾数を用いて2023年までの資源量と漁獲量を予測した。 FrecおよびFrec5yrで漁獲した場合、資源量と漁獲量の増加が見込まれる。 Fcurrent(≓Fmed)で漁獲した場合、将来の資源量および漁獲量は概ね横ばいで推移する。

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将来予測シミュレーション

加入量変動の不確実性を考慮した検討: 再生産成功率の年変動が親魚量や漁獲量の動向に与える影響をみるために、2019年以降の再生産成功率に2002~2017年に観測された値をランダムにサンプリングし、FrecとFrec5yrで漁獲した場合の親魚量と漁獲量の推移について、シミュレーションを10万回行った。 2023年漁期終了時の親魚量がBlimitを維持する確率は、Frecで74%、Frec5yrで62%であった。

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資源変動と海洋環境との関係

スルメイカの資源量は、海洋環境の変化によって変動することが報告されている。 1988/1989年にレジームシフトと呼ばれる中長期的な海洋環境の変化が発生し、北西太平洋では寒冷期から温暖期に移行したと考えられている。 海洋環境が温暖なレジームはスルメイカの再生産にとって好適で、寒冷なレジームはスルメイカの再生産にとって不適と考えられている。 近年のスルメイカの主産卵時期における東シナ海の水温環境を、過去に資源が大きく減少した寒冷期の年代と比較すると産卵場の水温は高めであり、海洋環境が長期的に寒冷化しているとは考えにくい。 一方で、1990~2001年までと2002年以降では産卵場の海洋環境に変化が生じ、2002年以降に加入動向が低下している可能性が考えられた。

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執筆者:加賀敏樹・山下紀生・岡本 俊・濱津友紀

資源評価は毎年更新されます。