令和元年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 スルメイカ 魚種写真
学名 Todarodes pacificus
系群名 秋季発生系群
担当水研 日本海区水産研究所
中央水産研究所

生物学的特性

寿命: 約1年
成熟開始年齢: 雄は約9カ月、雌は約10カ月以降
産卵期・産卵場: 10~12月、北陸沿岸~東シナ海
食性: 沿岸域では小型魚類、沖合域では動物プランクトン
捕食者: 大型魚類、海産ほ乳類、共食い

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漁業の特徴

主に日本海でいか釣り漁業により漁獲される。 沿岸域の漁獲物は主に生鮮、沖合域の漁獲物は主に冷凍で水揚げされる。 我が国の他、韓国、中国、北朝鮮、ロシアでも漁獲される。 韓国の漁獲量は1999年漁期(4月~翌3月。実際は11月まで)以降我が国より多い。 中国の漁獲量は、2004年漁期以降増加傾向と考えられるが、正確な情報はない。 北朝鮮の漁獲量も不明である。 ロシアの漁獲量は2015年漁期まで少なかったが、2016~2018年漁期に増加した。

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漁獲の動向

我が国の漁獲量は1970年代半ば以降減少し、1986年漁期に5.4万トンとなった。 その後増加し、1990年代に11万~18万トンとなった。 漁獲が最も多かった1996年漁期の後は減少傾向となり、2018年漁期は2.4万トンであった。 2018年漁期の漁獲量は韓国で3.3万トン、日韓合計で5.7万トンであった。 旧中型いか釣り船の1日1隻あたり漁獲量(CPUE)は90年代に上昇したが、2000年前後をピークとして減少傾向である。

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資源評価法

6~7月に実施した日本海スルメイカ漁場一斉調査におけるいか釣機1台1時間あたりの採集尾数(CPUE)から各年の標準化CPUEを求めた。 本年、標準化手法を変更したため、過去に遡り資源量が更新された。 資源尾数は標準化CPUEと比例関係にあると仮定して推定した。 親魚尾数は漁獲尾数および自然死亡係数(0.6/6ヶ月)から推定した。 2019年漁期の資源量は標準化CPUEから求めず、前年の親魚量および想定される再生産関係を用いた前進計算により求めた。

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資源状態

資源量は1990年代に増加し、1999~2015年漁期に84万~182万トンであったが、2016年以降減少傾向にあり、2018年漁期は61.6万トン、2019年漁期は前進計算により63.2万トンと推定された。 親魚量も資源量と同様に推移した。 再生産成功率は1990年代と比べ2000年漁期以降低い値で推移した。 その理由として、海洋環境の変化(秋季の高水温化)や密度効果が考えられる。 また近年は、中国と北朝鮮による漁獲が考慮できないことで漁期後の親魚量が過大評価され、見かけ上再生産成功率が低く推定されていることも考えられる。 Blimitは、再生産成功率の上位10%と加入量の上位10%を示す直線の交点となる親魚量(13.0億尾、36.5万トン)とし、2019年漁期後の予測親魚量(10.6億尾、29.7万トン)はBlimitを下回る。 水準は資源量で判断し、中・低位の境界を資源が少なかった1980年代の平均値(55.0万トン)、高・中位の境界を資源が増加した1990年代の平均値(113.7万トン)とした。 水準は中位、動向は近年5年間(2015~2019年)の資源量の推移から減少と判断した。

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管理方策

2019年漁期後の親魚量はBlimitを下回るため、親魚量をBlimitに回復させることを管理目標とし、Frec5yr(5年後に親魚量がBlimitに回復することが期待できるF)とFrec(B/Blimit×Fmed)を漁獲シナリオとして2020年漁期ABCを算定した。 併せて、Fmed(親魚量の維持)とFcurrent(現状の漁獲圧)での漁獲量も算定した。 中国と北朝鮮の漁獲量、努力量等が不明であることが本資源の評価の不確実性の主要因の一つであり、これらを把握し、各国間の協力による評価・管理が必要である。 また、2019年漁期の資源量推定値の不確実性は例年以上に高いため、予防的措置を講じ漁獲係数にα=0.8を乗じたABCtarget以下による管理が望ましい。
資源量(2020)=634千トンを仮定、 親魚量(2019)=297千トン、 Blimit=365千トン
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target
/Limit
2020年漁期
ABC
(千トン)
漁獲割合
(%)
F値
(現状の
F値からの
増減%)
2024年
漁期後の
親魚量
(千トン)
(80%区間)
確率評価(%)
2024年
漁期後に
2019年
漁期後の
親魚量を維持
2024年
漁期後に
Blimitを維持
親魚量の増大
(5年でBlimitへ回復)
(Frec5yr)
Target 42 7 0.09
(-39%)
754
(244~1,384)
84 76
Limit 52 8 0.12
(-24%)
704
(227~1,344)
81 72
親魚量の増大
(B/Blimit×Fmed)
(Frec)
Target 46 7 0.10
(-33%)
734
(237~1,372)
82 74
Limit 57 9 0.13
(-17%)
681
(220~1,286)
79 69
2020年漁期
算定漁獲量
(千トン)
親魚量の維持
(Fmed)
Target 56 9 0.13
(-18%)
685
(221~1,295)
79 69
Limit 69 11 0.16
(+2%)
624
(200~1,172)
74 63
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Target 55 9 0.12
(-20%)
691
(223~1,308)
80 70
Limit 68 11 0.16
(±0%)
631
(202~1,182)
75 64
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値による漁獲量
  • Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量
  • Ftarget=αFlimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • Fcurrentは2016~2018年漁期のFの平均値
  • Fmedは日本海西部海域における秋季の水温が上昇した1999年漁期以降の再生産成功率の中央値(2.14)に対応するF
  • 漁獲割合は2020年漁期漁獲量/資源量
  • 2019年漁期以降の加入量は、1999年漁期以降の再生産成功率の中央値(2.14)を使用して予測した
  • 2020年漁期は2020年4月~2021年3月と定義するが、実際の漁期は11月まで
コメント
  • 本系群のABC算定には規則1-1)-(2)を用いた
  • 単年生資源であるため、資源量は短期的に変動しやすいと考えられる
  • スルメイカの再生産にとって不適な寒冷レジームに移行したと判断された場合は、将来予測手法や管理基準値を変更する必要がある
  • 近年、韓国以外の外国による漁獲が増加している可能性があるが、実態が不明であるため本評価ではその漁獲が考慮されていない。このため、親魚量や再生産関係、および推定される将来予測についても、不確実性が高まっていることに注意を要する
  • 2019年漁期の資源量推定値の不確実性は例年以上に高いため、予防的措置を講じ漁獲係数にα=0.8を乗じたABCtarget以下による管理が望ましい
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「本資源は減少傾向にあるが、これは海洋環境の変化に伴う再生産環境の悪化によると考えられ、短期的には減少傾向を緩和し、中期的には環境が改善された場合に資源を速やかに増大できるよう親魚量を確保することを基本方向とする。ただし、本資源は、大韓民国等と我が国の水域にまたがって分布し、外国漁船によっても採捕が行われており我が国のみの管理では限界があることから、関係国との協調した管理に向けた取組が行えるよう努めつつ、管理を行うものとする」とされており、本系群の親魚量はBlimitを下回っていることから、親魚量の増大を図るよう管理をすることが望ましい

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

漁獲シナリオに対応したF値による資源量および漁獲量の予測:
将来予測には日本海西部海域の秋季の水温が上昇した1999年以降の再生産成功率の中央値を用いた。 2020年漁期以降の資源量と漁獲量は、Frec5yrおよびFrecでは増加が見込まれ、Frec5yrの方がより早く増加すると推定された。 Fmedでは横ばい、Fcurrentでもほぼ横ばいと推定された。

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将来予測シミュレーション

加入量変動の不確実性を考慮した検討:
1999年漁期以降の再生産成功率を無作為に抽出し加入量を仮定する将来予測シミュレーションを行った。 2024年漁期後に親魚量がBlimitを維持する確率は、Frec5yrでは72%、Frecでは69%であった。

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資源変動と海洋環境との関係

スルメイカの資源量は、漁獲の影響に加えてレジームシフトと呼ばれる中長期的な海洋環境の変化と、年による短期的な海洋環境の変化に影響される。 特に1989年の北西太平洋における冬季水温の上昇は、1990年代以降にスルメイカの資源量が増加した主要因と考えられている。 一方、資源量が2000年漁期前後以降、中長期的に減少傾向にある原因としては、再生産成功率の低下(推測される理由については資源状態の項を参照)のほか、中国と北朝鮮による明らかでない漁獲量を含めれば、適正な漁獲圧を越えて漁獲があった可能性も考えられる。

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執筆者:久保田洋・宮原寿恵・松倉隆一・岡本 俊・西嶋翔太

資源評価は毎年更新されます。