平成25年度資源評価票(ダイジェスト版)

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標準和名 マアジ 魚種写真
学名 Trachurus japonicus
系群名 対馬暖流系群
担当水研 西海区水産研究所

生物学的特性

寿命: 5歳
成熟開始年齢: 1歳(50%)、2歳(100%)
産卵期・産卵場: 冬~春季(1~6月)、南部ほど早い傾向があり、盛期は3~5月、東シナ海南部、九州・山陰沿岸~日本海北部沿岸
索餌期・索餌場: 春~夏季に索餌のため北上回遊、秋~冬季に越冬・産卵のため南下回遊
食性: 代表的餌生物は、オキアミ類、アミ類、魚類仔稚等の動物プランクトン
捕食者: 稚幼魚はブリ等の魚食性魚類

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漁業の特徴

東シナ海・日本海のマアジ漁獲の約80%は、まき網漁業による。主漁場は東シナ海から九州北~西岸・日本海西部である。マアジは東シナ海及び日本海で操業する大中型まき網漁業による漁獲の25%を占める(2012年)。これまで、浮魚資源に対する努力量管理が、大中型まき網の漁場(海区制)内の許可隻数を制限するなどの形で行われてきた。さらに1997年から、TACによる資源管理が実施されている。

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漁獲の動向

我が国の漁獲量は、1970年代後半に減少し、1980年に4.1万トンまで落ち込んだ。1993~1998年には20万トンを超えたが、1999~2002年は13.5万~15.9万トンに減少した。2003年から漁獲量は再び増加し、2004年には19.2万トンになったが、2005年以降は減少し、2012年には10.9万トンになった。韓国は2012年にアジ類を1.7万トン漁獲した。

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資源評価法

幼稚魚の分布量調査結果、漁獲量、漁獲努力量の情報や漁獲物の生物測定結果から、年齢別の漁獲尾数による資源解析(コホート解析)を行った。コホート解析は、1~12月を1年として0~3歳以上の4年齢群について資源尾数・重量を計算し、その動向が大中型まき網の年齢別資源密度指数および調査船による0、1歳魚の資源量指標値に最もよく適合するように最近年のFを決定した。資源解析は、日本と韓国の漁獲について行った。

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資源状態

資源量は1970年代後半に低い水準であったが、その後増加傾向を示し、1993~1998年には、50万~54万トンの高い水準を維持した。1999年以降はそれよりやや低く、2001年は28万トンに減少したが、その後増加して、2004年は55万トンであった。2005年以降は同水準を保ち、2012年は47万トンであった。再生産成功率は、1990~2000年には変動しながら減少傾向を示したが、2001年に急増した。その後は再び減少傾向を示し、2005~2007年はかなり低い値となったが、2008年以降は上向いた。親魚量と加入量には正の相関があり、親魚量が少ない年には高い加入量が出現しない傾向がある。

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管理方策

再生産関係から資源回復の閾値(Blimit)を2001年の親魚量水準とした。2012年はBlimitより高い水準にある。漁獲シナリオとしてはFcurrent、Fmed、さらに資源量の増加が期待できるシナリオとしてF30%SPRによるABCを算定した。2013年以降の加入量は、再生産成功率を過去10年間(2002~2011年)の中央値21.0尾/kgとし、その値に年々の親魚量を乗じた値とした。なお、親魚量30万トン以上では加入量を63億尾と設定した。また、加入量当り漁獲量を増やすために、0歳魚の漁獲を減らすことが有効である。
漁獲シナリオ
(管理基準)
F値
(Fcurrentとの
比較)
漁獲割合 将来漁獲量 評価 2014年ABC
5年後 5年平均 現在の親魚量
を維持
(5年後)
Blimitを維持
(5年後)
資源量の増大
(F30%SPR)
0.43
(0.98Fcurrent)
29% 145千トン

282千トン
200千トン 99.7% 100% 183(158)
千トン
現在の漁獲圧の
維持(Fcurrent)
0.44
(1.00Fcurrent)
29% 144千トン

299千トン
202千トン 99.7% 100% 185(160)
千トン

親魚量の
維持(Fmed)
0.63
(1.42Fcurrent)
38% 145千トン

311千トン
228千トン 79% 99.8% 240(208)
千トン
コメント
  • 系群のABC算定には規則 1-1)-(1)を用いた
  • 2014年ABC( )内は、我が国EEZ内の値
  • 我が国EEZ内外への配分は、日本と韓国の漁獲実績から求めた総漁獲量に対する我が国EEZ内における漁獲量の比率の直近5カ年(2008~2012年)の平均値(0.868)を用いた。ただし当該比率は年により漁場形成が異なるため、年変動がある。1999年以降で最も高い比率(1999年、0.919)を用いた「親魚量の維持」シナリオによる2014年ABC我が国EEZ内の値は22.1万トンであった
  • F値は各年齢の平均
  • Fcurrentは2012年のF
  • 漁獲割合は2014年漁獲量/資源量
  • 将来漁獲量の幅は80%区間
  • 現在の親魚量は2012年の親魚量
  • 現在の漁獲圧(Fcurrent)は親魚量の維持を目指すFmedよりも低い
  • 中期的管理方針では「大韓民国及び中華人民共和国等と我が国の水域にまたがって分布し、大韓民国及び中華人民共和国等においても採捕が行われていることから、関係国との協調した管理に向けて取り組みつつ、資源の維持若しくは増大することを基本に、我が国水域への来遊量の年変動も配慮しながら、管理を行うものとし、資源管理計画の推進を図るものとする。」とされている
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    資源評価のまとめ

  • 資源水準は中位、動向は増加
  • Blimitは、近年高い加入があった中でも親魚量が比較的少なかった2001年の親魚量(15万トン)とした
  • 親魚量水準は高く(25万トン)、Blimit(2001年水準)を上回っている
  • 2008年以降に加入量は増加したとみられ、資源量も増加した
  • 現状の漁獲圧は高くなく、資源を現状維持できる水準
  • 管理方策のまとめ

  • 資源が増大するものとしてF30%SPR、現在の漁獲圧を維持するものとしてFcurrent、親魚量を維持するものとしてFmedによりABCを算定した
  • 0歳魚の漁獲を控えることで、加入量当り漁獲量と、資源量の増加が望める
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    期待される管理効果

    (1)漁獲シナリオに対応したF値による資源量(親魚量)及び漁獲量の予測
    設定した加入量の条件のもとでは、F30%SPR(各年齢平均)=0.43、Fcurrent=0.44で漁獲を毎年続ければ資源量の増加が見込める。Fmed=0.63では、親魚量の維持が見込める。
    (2)加入量変動の不確実性を考慮した検討
    再生産成功率の年変動が親魚量の動向に与える影響を見るために、2013~2024年の再生産成功率を仮定値の周りで変動させ、F30%SPR、Fcurrent、Fmedで漁獲を続けた場合の親魚量を計算した。2013~2024年の加入量は毎年異なり、その値は1973~2011年の平均値に対する各年の比率が同じ確率で現れて、その比率に仮定値21.0尾/kgを乗じたものとした。親魚量が30万トンを超えた場合は、加入量を計算する際の親魚量は30万トンで一定とした。1,000回試行した結果、下側10%でみると親魚量はF30%SPRやFcurrentでは増加が見られ、Fmedでは2012年水準を維持する程度であった。

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    資源変動と海洋環境との関係

    再生産成功率の変動には海洋環境が深く関わっていると考えられる。2005年を除く1973~2012年の再生産成功率と東シナ海(北緯28度30分、東経125度30分)の3月の平均海面水温(気象庁保有データ)には負の相関があった。2~3月は東シナ海南部においてマアジの主要な産卵場が形成されると考えられており、水温に代表される海洋環境が、初期の生残に大きな影響を与えると想定される。ただし、2005年は3月の海面水温が低かったにもかかわらず、再生産成功率が低かったとみられ、従来の関係からは外れている。

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    執筆者:依田真里・由上龍嗣・大下誠二・黒田啓行

    資源評価は毎年更新されます。