平成25年度資源評価票(ダイジェスト版)

[詳細版へ]
標準和名 マサバ 魚種写真
学名 Scomber japonicus
系群名 太平洋系群
担当水研 中央水産研究所

生物学的特性

寿命: 7~8歳(最高11歳)
成熟開始年齢: 1歳(0%)、2歳(50%)、3歳(100%)、年により異なる
産卵期・産卵場: 冬~春季(1~6月)、主に伊豆諸島周辺海域(3~6月)、他に足摺岬、室戸岬周辺や紀南などの太平洋南部沿岸域や東北海域
索餌期・索餌場: 夏~秋季、主に三陸~北海道沖
食性: 稚魚は動物プランクトン、幼魚以降はカタクチイワシなどの魚類やオキアミ類などの甲殻類、サルパ類など
捕食者: サメ類などの大型魚類、ヒゲクジラ類

▲このページのTOPへ

漁業の特徴

漁業種別漁獲量は大中型まき網が最も多く、主に常磐~三陸北部海域において0~2歳魚を主対象としてほぼ周年操業する(盛期は9~12月)。道東海域でも漁場が形成される。中型まき網は千葉県以西の沿岸各地で周年操業するが漁獲は少ない。たもすくいおよび棒受網は1~6月の伊豆諸島海域に越冬、産卵で集群する親魚群を主に漁獲する。定置網は各地で行われ、三陸沿岸での漁獲が多い。その他、各地で釣りなどでも漁獲する。

▲このページのTOPへ

漁獲の動向

1978年(147万トン)のピーク後減少し、1990~1991年に2万トン程度まで減少した。その後はやや増加し、2004~2008年は加入水準の高い2004、2007年級群によって17万~24万トンと比較的安定して推移した。最近は漁獲努力量の低下などにより2011年は10.5万トン、2012年は12.3万トンとやや減少した。

▲このページのTOPへ

資源評価法

1970~2011年級群について7月~翌年6月の漁期を年単位とする年齢別漁獲尾数を使ったコホート解析により、資源量を推定した。最近年の漁獲係数は、7系列の指標値(漁獲努力量、CPUE、および5つの加入量指標値)によるチューニングを行って推定した。自然死亡係数は0.4とした。最近年の2012年級群については2つの資源量指標値による回帰式で推定した。

▲このページのTOPへ

資源状態

資源量は1970年代には300万トン以上の高い水準であったが、1979年以降、時折みられる低いRPSによる加入量の減少と高い漁獲圧によって減少し、2001年には15万トンまで落ち込んだ。その後、2004年級群などの比較的高い加入とまき網操業管理による漁獲圧の低下により増加し、2012年は109万トンであった。親魚量が45万トン以上の1970~1985年では、年々のRPSは比較的安定し、加入量は年変化があるものの高い水準であった。親魚量が45万トンを下回った1986~2011年では、RPSの変動が大きく、かつ親魚量が少ないために加入量の水準が低下した。2012年の親魚量は47万トンであった。

▲このページのTOPへ

管理方策

親魚量が45万トンを下回ると加入量の変動が大きく、水準が低下したことから、親魚量45万トンをBlimitとする。現在の親魚量(2012年47万トン)はBlimitを上回っている。ABCは、過去のRPS中央値のもとでの将来予測においてBlimit以上の親魚量を維持する漁獲シナリオに基づいて算定した。現状の親魚量はBlimitをわずかに上回る水準であり、今後の加入動向の不確実性も高いことから、より安全をみた安定的維持を図る漁獲シナリオ(0.8Fmedを適用)が望ましい。また、現状の漁獲圧(Fcurrent)を維持する漁獲シナリオに基づいたABCもあわせて算定した。
漁獲シナリオ
(管理基準)
F値
(Fcurrentとの
比較)
漁獲割合 将来漁獲量 評価 2014年
漁期ABC
5年後 5年平均 現在の親魚量を
維持(5年後)
Blimitを維持
(5年後)
現状の漁獲圧の
維持(Fcurrent)
0.68
(1.00Fcurrent)
19% 375千トン

950千トン
504千トン 96% 97% 410千トン
親魚量の安定的
維持(0.8Fmed)
0.82
(1.22Fcurrent)
23% 342千トン

968千トン
536千トン 83% 86% 478千トン
親魚量の維持
(Fmed)
1.03
(1.52Fcurrent)
27% 250千トン

900千トン
545千トン 54% 56% 564千トン
コメント
  • 当該資源は毎年の再生産成功率の変動が大きいため将来予測の不確実性が大きい
  • 本系群のABC算定には規則1-1)-(1)を用いた
  • 親魚量の維持を図るシナリオを設定した。現在の親魚量はBlimitをわずかに上回る水準であり、今後の加入動向の不確実性も高いことから、より安全をみた安定的維持を図ること(0.8Fmed)が望ましい
  • 中期的管理方針では「近年の海洋環境が当該資源の増大に不適な状態にあると認められないことから、優先的に資源の回復を図るよう、管理を行うものとし、資源管理計画に基づく取組の推進を図るものとする」とあり、全てのシナリオはこれに合致する
  • 将来漁獲量の幅は80%区間
  • Fcurrentは2008~2012年のFの平均、F値は全年齢の単純平均
  • Fmedは1970~2012年の再生産関係のプロットの中央値に相当するF
  • 評価の現在の親魚量を維持(5年後)およびBlimitを維持(5年後)は、2019年漁期当初にそれぞれ2012年親魚量以上およびBlimit以上である確率
  • 漁獲割合は2014年の漁獲量/資源量
  • ▲このページのTOPへ

    資源評価のまとめ

  • 親魚量はBlimitを上回り、資源水準は中位、動向は増加
  • RPSの年変動が大きく、加入量の年変化は大きい
  • 2012年の資源量は109万トン、親魚量は47万トン(Blimit以上)
  • 現状の漁獲圧は高くなく、漁獲圧の維持で資源量は増加
  • 管理方策のまとめ

  • 加入量の増加と一定水準以上の維持を図るためにBlimit(45万トン)以上の親魚量を維持する
  • 過去のRPSの中央値のもとで親魚量のBlimit以上での安定的維持が図られる漁獲シナリオを設定
  • 近年、未成魚への漁獲圧が低下しており、これを維持することが重要
  • ▲このページのTOPへ

    期待される管理効果

    (1)漁獲シナリオに対応したF値による資源量(親魚量)及び漁獲量の予測
    加入量を過去のRPSの中央値で仮定して予測した。Fcurrent、0.8Fmedでは親魚量の増加が見込まれる。Fmedでは現在の親魚量水準が維持される。
    (2)加入量変動の不確実性を考慮した検討
    RPSの過去観測値の中央値からの残差のリサンプリングによって加入量を与える1,000回の試行で検討した。5年後にBlimitを維持する確率は、Fcurrentは97%、0.8Fmedは86%と高かった。Fmedは56%とやや低い。

    ▲このページのTOPへ

    資源変動と海洋環境との関係

    加入量の多い年は主産卵期である4月ふ化個体の割合が高く、少ない年は低いという特性がみられ、主に4月ふ化個体の生残率によって加入量が決定すると考えられる。早期の4月の産卵は、後期(5~6月)に比べて親魚の組成や経験水温的に良質卵となり、ブルーミング時期と一致するなど仔稚魚の生残に有利である。その一方で、4月は初期生残率に大きく影響するふ化後の経験環境の年変化が大きい。経験水温が産卵場水温と同様の18℃程度では、成長率は低く、変態が遅れ生残率は低くなるが、速やかに黒潮付近の20℃程度の水温で移送されると、成長率は高くなり、高い加入量となることが示唆されている。

    ▲このページのTOPへ


    執筆者:川端 淳・渡邊千夏子・本田 聡・岡村 寛・市野川桃子

    資源評価は毎年更新されます。