平成27年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 マイワシ 魚種写真
学名 Sardinops melanostictus
系群名 太平洋系群
担当水研 中央水産研究所

生物学的特性

寿命: 7歳程度
成熟開始年齢: 近年は1歳(50%)、2歳(100%)
産卵期・産卵場: 11~6月で、最近の盛期は2~4月。産卵場は四国沖~関東近海
索餌期・索餌場: 夏秋季の索餌期に沿岸域で滞留する群と北方へ索餌回遊する群があり、後者の回遊範囲は資源量水準によって変化し、低水準では常磐沖まで、中水準では三陸北部~道東沖の親潮域
食性: 仔稚魚期は動物プランクトンを捕食、成魚は珪藻類も濾過摂餌する
捕食者: 中・大型の魚類、イカ類、海産ほ乳類、海鳥類

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漁業の特徴

主要漁業は幼魚~成魚を対象とする大中型・中型まき網、定置網。船曳網等によってシラスも漁獲される。太平洋中・北区での漁獲が多く、房総以北の大中型まき網が大部分を占める。太平洋南区での漁獲は少ない。1980年代には大量の漁獲があった道東沖のまき網漁場は、1990年代以降、資源の減少に伴い消滅していたが、最近の資源増加に伴い来遊量が増加し、2012年以降漁場が形成されている。

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漁獲の動向

漁獲量は、1964~1967年は1万トンを下回っていたが、1970年代~1980年代前半にかけて増加し、1983~1989年は250万トンを越える極めて高い水準で推移した。その後減少し、1993年には100万トンを下回り、1995~2001年は10万~30万トン台、2002~2010年は10万トンを下回る低い水準で推移した。2011年以降は10万トン以上に増加し、2014年は19.2万トンであった。

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資源評価法

年齢別漁獲尾数に基づき、加入量、1歳魚資源量および親魚量を反映する3つの資源量指標値を用いてチューニングしたコホート解析により、資源量を算定した。自然死亡係数は0.4/年とした。

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資源状態

資源量は、1980年代の1000万トン以上の高水準から、1990年代に減少し、2002~2007年は10万トン台の低水準で推移したが、2008年以降良好な加入により増加し、2014年は92.0万トンであった。親魚量も同様に2002年以降極めて低水準で推移したが、2011年以降増加し、2014年は54.8万トンであった。親魚量が1996年水準を下回ると加入量の水準が低下したことから、Blimitを1996年の親魚量(22.1万トン)とした。禁漁水準(Bban)は、1950~60年代の資源低水準期における推定最低資源量2.2万トンとした。資源水準の区分は、密度効果による成長停滞などがみられた資源量500万トン以上を高位、資源量50万トン以上、親魚量がBlimitである22.1万トン以上で、成魚が三陸北部以北まで索餌回遊する水準を中位、資源量、親魚量がこれらを下回り、成魚の索餌回遊が常磐海域以南に縮小する水準を低位とした。2014年の親魚量はBlimitを上回っていることから、2014年度の資源水準は中位、動向は過去5年間(2010~2014年)の資源量の推移から増加と判断した。


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管理方策

2014年の親魚量(54.8万トン)はBlimit、Bbanを上回っていることから、中位水準の維持を目標とし、親魚量の維持を図る漁獲シナリオ(Fmed)を適用した。現状の漁獲圧(Fcurrent)は高くなく、将来的に資源を現状以上で維持~増加できる。
漁獲シナリオ
(管理基準)
Limit/
Target
F値
(Fcurrentとの
比較)
漁獲割合
(%)
将来漁獲量
(千トン)
確率評価
(%)
2016年ABC
(千トン)
5年後 5年平均 2014年
親魚量を
維持
(5年後)
Blimitを
維持
(5年後)
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Limit 0.32
(1.00Fcurrent)
19 196

626
305 94 100 205
Target 0.25
(0.80Fcurrent)
16 190

611
280 98 100 169
親魚量の維持
(Fmed)
Limit 0.59
(1.89Fcurrent)
32 136

587
323 41 89 340
Target 0.47
(1.49Fcurrent)
27 156

686
326 66 98 286
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量、Targetは、資源変動の可能性や誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量
  • Ftarget=αFlimitとし、係数αは標準値0.8を用いた
  • Fcurrentは2012~2014年のFの平均値
  • Fmedは不確実性が高い最近年(2014年)を除く過去の資源中位水準と判断される年(1991~2000、2012~2013年)の再生産成功率の中央値(RPSmed:21.1尾/kg)に対応する漁獲係数
  • 漁獲割合は2016年の漁獲量/資源量
  • F値は各年齢の単純平均値
  • 漁獲シナリオにある「親魚量の維持」は中長期的に安定する親魚量での維持
  • 将来漁獲量の5年後は2020年の漁獲量の80%区間
  • 5年平均は2016~2020年の平均
  • 確率評価は漁獲を行った翌年の親魚量で判断(5年後は2021年当初)
コメント
  • 本系群のABC算定には規則1-1)-(1)を用いた
  • 本系群は加入量および年齢別選択率の年変動が大きく、将来予測における不確実性は高い
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「資源水準の維持若しくは増大を基本方向として、漁獲動向に注意しつつ、管理を行うもの」とされており、親魚量の維持シナリオから得られる漁獲係数以下であれば、現状の資源水準を維持または増大させることができると考えられる
  • 親魚量の維持シナリオでの2014年の親魚量を維持する確率は50%未満となったが、これは管理開始後に安定維持される親魚量が2014年をやや下回る水準であるため、およびシミュレーションに用いた再生産成功率の分布が平均よりも小さいほうに偏っているためである

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

(1)漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測
過去の中位水準年の再生産成功率中央値に対応するFmed、現状の漁獲圧であるFcurrentを設定した。Fcurrentを維持した場合、将来予測で資源量、親魚量は増加する。現状よりも漁獲圧を高めるFmedでは、資源量は2014年より高い水準で維持される。将来的な漁獲量はFcurrent がFmedを上回る。
(2)加入量変動の不確実性を考慮した検討
親魚量に応じて過去の再生産成功率観測値をリサンプリングして加入量を仮定する将来予測シミュレーションにより検討した。2021年の親魚量が2014年水準およびBlimitを維持する確率は、Fcurrentでは94%および100%、Fmedでは41%および89%であった。

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資源変動と海洋環境との関係

本資源は海洋環境のレジーム・シフトと同期して変動し、北西太平洋での寒冷レジームにおいて増大したことが知られている。これは、稚仔魚の生育場の黒潮続流域で、アリューシャン低気圧の勢力の強化によって風が強まり、下層からの栄養塩供給が増えて餌量が増加し、加入量が増大するためという説がある。資源増大は、過去にも50~100年程度の間隔で繰り返し起こったが、いずれも十年~数十年間程度の短期間で、長期に持続することはなかった。加入動向と環境指標との関係としては、冬春季の親潮南下指数が高いと再生産成功率が高い、といった関係が示されており、親潮によって生育場の餌量が増加して生残率が高くなるためと推察されている。

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執筆者:渡邊千夏子・上村泰洋・由上龍嗣・赤嶺達郎・岸田 達

資源評価は毎年更新されます。