平成27年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 マアジ 魚種写真
学名 Trachurus japonicus
系群名 太平洋系群
担当水研 中央水産研究所

生物学的特性

寿命: 5歳前後
成熟開始年齢: 1歳(50%)、2歳(100%)
産卵期・産卵場: 冬~初夏、東シナ海を主産卵場とする群と九州~本州中部沿岸で産卵する地先群がある
索餌期・索餌場: 九州南岸~東北太平洋岸
食性: 仔稚魚は動物プランクトンを摂餌する  幼魚以降は魚食性が強くなる
捕食者: 大型の魚類等

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漁業の特徴

まき網漁業による漁獲が70~80%を占め、定置網による漁獲が約20%でこれに次いでいる。日向灘、豊後水道、紀伊水道から熊野灘では春から秋までの漁獲が多く、相模湾では春が主体である。これらの海域では春から0歳魚が、年初から1歳魚が漁獲される。千葉県以北の海域では1歳魚以上の漁獲が多い。

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漁獲の動向

漁獲量は1982~1985年までは2万トン以下であったが、1986年に急増して3.7万トンとなり、1990年以降に再び増加して1994~1997年は7万~8万トンと高い水準で推移した。1997年以降は減少に転じ、2009年以降は3万トン以下で推移している。2014年の漁獲量は2.4万トンであった。本系群の外国漁船による漁獲はない。

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資源評価法

年齢別漁獲尾数に基づいて、加入量指標値を用いてチューニングをしたコホート解析により年齢別資源尾数、資源量、漁獲係数を計算した。自然死亡係数は、寿命との経験的な関係から0.5とした。

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資源状態

資源量は1982年から1990年代始めにかけて増加し、1990年には高位水準になったが、1996年の16.2万トンを頂点として減少した。2014年の資源量は5.8万トンと推定された。親魚量は1984年以降増加し1992年に最高の6.4万トンとなった。1993~2000年まで5万トン前後で推移した後、2001~2010年に減少したが、2013、2014年はそれぞれ3.6万トン、3.5万トンと増加した。本資源のBlimitは低い親魚量から加入量の多い年級が発生した1986年の親魚量(2.4万トン)とし中位と低位の境界とする。中位と高位の境界は、1982年以降の親魚量の最低~最高値の三等分により4.7万トンとする。2014年の親魚量はBlimitを上回ったことから水準は中位、動向は過去5年間(2010~2014年)の資源量の推移から横ばいと判断した。

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管理方策

2014年の親魚量はBlimitを上回ったことから、親魚量を安定的に維持することを目標とし、親魚量の増大:F30%SPR、現状の漁獲圧の維持:Fcurrent、親魚量の維持:Fmedの3つの漁獲シナリオによる漁獲量をABCとして算定した。2015年以降の加入量は、再生産成功率を過去10年間(2004~2013年)の中央値23.2尾/kgとし、その値に年々の親魚量を乗じた値とした。なお、再生産成功率に乗じる親魚量は過去最高の6.4万トンを上限とした。
 
漁獲シナリオ
(管理基準)
Limit/
Target
F値
(Fcurrentとの
比較)
漁獲割合
(%)
将来漁獲量
(千トン)
確率評価
(%)
2016年ABC
(千トン)
5年後 5年平均 2014年
親魚量を
維持
(5年後)
Blimitを
維持
(5年後)
親魚量の増大
(F30%SPR)
Limit 0.47
(0.62Fcurrent)
26 49.7

74.6
39.3 100 100 17.3
Target 0.38
(0.49Fcurrent)
22 49.1

71.8
36.6 100 100 14.4
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Limit 0.76
(1.00Fcurrent)
37 32.4

67.4
36.0 98 100 24.8
Target 0.61
(0.80Fcurrent)
32 44.9

73.6
39.5 100 100 21.1
親魚量の維持
(Fmed)
Limit 0.98
(1.29Fcurrent)
44 18.9

44.6
29.2 25 69 29.2
Target 0.78
(1.03Fcurrent)
38 30.7

65.5
35.2 96 100 25.3
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量、Targetは、資源変動の可能性や誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量
  • Ftarget=αFlimit、係数αは標準値0.8を用いた
  • Fcurrentは2012~2014年のFの平均値
  • 漁獲割合は2016年の漁獲量/資源量
  • F値は各年齢の単純平均値
  • 将来漁獲量の幅は80%区間
  • 漁獲シナリオにある「親魚量の維持」は中長期的に安定する親魚量での維持を指す
コメント
  • 本系群のABC算定には規則1-1)-(1)を用いた
  • 現状の漁獲圧はBlimitを維持できる可能性が高く、持続的に利用可能な水準である
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「資源水準の維持を基本方向として管理を行うものとする」とされており、親魚量の維持シナリオに対応する漁獲係数(Fmed)以下の漁獲係数であれば資源水準は維持されると考えられる。
  • 2013年および2014年の再生産成功率の低下が懸念される。確率評価は直近年を除く10年間(2004~2013年)の再生産成功率を参照して今後の加入量が見積られており、今後も低い再生産成功率が続くようであれば、確率評価はより低くなることを考慮し、安全を見込んだシナリオが選択されることが望ましい
  • 「親魚量の維持」シナリオでの2014年親魚量を維持する確率は25%と低いが、これは中長期的に安定する親魚量水準が2014年親魚量より低いためである。決定論的予測では親魚量は2014年親魚量(3.5万トン)より低い2.9万トンで安定する

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

(1)漁獲シナリオに対応した漁獲係数による資源量及び漁獲量の予測
設定した加入量の仮定のもとでは、F30%SPR、Fcurrentでは漁獲量・資源量ともに増加する。Fmedでは資源量・漁獲量ともにほぼ横ばいで推移する。
(2)加入量変動の不確実性を考慮した検討
過去の再生産成功率観測値をリサンプリングして加入量を仮定し、それぞれの漁獲シナリオで漁獲した場合の親魚量の動向を予測した。再生産成功率に乗じる親魚量は6.4万トンを上限とした。5年後に親魚量がBlimit以上に維持される確率は、F30%SPRおよびFcurrentで100%、Fmedで69%であった。しかし近年の加入量と再生産成功率は減少傾向にあり、今後このような状態が続く場合、確率は低くなることから動向を注視する必要がある。

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執筆者:渡邊千夏子・由上龍嗣・上村泰洋・赤嶺達郎・亘 真吾

資源評価は毎年更新されます。