平成27年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

[詳細版へ]
標準和名 マアジ 魚種写真
学名 Trachurus japonicus
系群名 対馬暖流系群
担当水研 西海区水産研究所

生物学的特性

寿命: 5歳前後
成熟開始年齢: 1歳(50%)、2歳(100%)
産卵期・産卵場: 1~6月、南部ほど早い傾向があり、盛期は3~5月、東シナ海南部、九州・山陰沿岸~日本海北部沿岸
索餌期・索餌場: 春~夏季に索餌のため北上回遊、秋~冬季に越冬・産卵のため南下回遊
食性: 代表的餌生物は、オキアミ類、アミ類、魚類仔稚等の動物プランクトン
捕食者: 稚幼魚はブリ等の魚食性魚類

▲このページのTOPへ

漁業の特徴

東シナ海・日本海のマアジ漁獲の約80%は、まき網漁業による。主漁場は東シナ海から九州北~西岸・日本海西部である。マアジは東シナ海及び日本海で操業する大中型まき網漁業による漁獲の26%を占める(2014年)。これまで、浮魚資源に対する努力量管理が、大中型まき網の漁場(海区制)内の許可隻数を制限するなどの形で行われてきた。さらに1997年から、TACによる資源管理が実施されている。

▲このページのTOPへ

漁獲の動向

我が国の漁獲量は、1970年代後半に減少し、1980年に4.1万トンまで落ち込んだ。1993~1998年には20万トンを超えたが、1999~2002年は13.5万~15.9万トンに減少した。2003年から漁獲量は再び増加し、2004年には19.2万トンになったが、2006年以降はほぼ横ばいで、2014年は12.1万トンであった。韓国はアジ類を毎年、数万トン漁獲しており、2014年は2.4万トンで、ほとんどはマアジだと推定される。

▲このページのTOPへ

資源評価法

幼稚魚の分布量調査結果、漁獲量、漁獲努力量の情報や漁獲物の生物測定結果から、年齢別の漁獲尾数に基づきコホート解析を行った。コホート解析は、1~12月を1年として0~3歳以上の4年齢群について資源尾数・重量を計算し、その動向が大中型まき網の年齢別資源密度指数および調査船による0、1歳魚の資源量指標値に最もよく適合するように最近年の漁獲係数を決定した。資源解析は、日本と韓国の漁獲について行った。

▲このページのTOPへ

資源状態

資源量は1970年代後半に低水準だったが、1980~1990年代前半に増加して2005年以降は40万トン前後で経過しており、2014年の資源量は45万トンと推定され、過去42年間(1973~2014年)で9番目に高かった。しかし、1960年代前半には漁獲量が30万~40万トンと報告されていることから、1973年以降では高位水準と判断される年はないと考えた。親魚量と加入量の間には正の相関が見られることから、2000年以降で高い加入量があった2001年の水準(親魚量15万トン)をBlimitとし、資源水準の低位と中位の境界とした。2014年の親魚量は20万トンとBlimit以上であることから中位と判断した。最近5年間(2010~2014年)の資源量の推移から、資源動向は横ばいと判断した。

▲このページのTOPへ

管理方策

2014年の親魚量(20万トン)はBlimitより高い水準にあることから、漁獲シナリオとしてはFcurrent、Fmed、さらに資源量の増加が期待できるシナリオとしてF30%SPRによるABCを算定した。2014年以降の加入量は、再生産成功率(RPS)を過去10年間(2004~2013年)の中央値18.2尾/kgとし、その値に年々の親魚量を乗じた値とした。なお、親魚量30万トン以上では加入量を55億尾と設定した。また、加入量当り漁獲量を増やすためには、0歳魚の漁獲を減らすことが有効である。
漁獲シナリオ
(管理基準)
Limit/
Target
F値
(Fcurrentとの
比較)
漁獲割合
(%)
将来漁獲量
(千トン)
確率評価
(%)
2016年ABC
(千トン)
5年後 5年平均 2014年
親魚量を
維持
(5年後)
Blimitを
維持
(5年後)
資源量の増大
(F30%SPR)
Limit 0.41
(0.73Fcurrent)
28 125

257
178 100 100 167
Target 0.32
(0.58Fcurrent)
24 117

244
161 100 100 139
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Limit 0.56
(1.00Fcurrent)
36 105

261
193 83 96 211
Target 0.45
(0.80Fcurrent)
30 127

255
184 99 100 179
親魚量の維持
(Fmed)
Limit 0.59
(1.06Fcurrent)
37 101

259
196 76 93 221
Target 0.47
(0.85Fcurrent)
32 127

270
190 97 100 188
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量である
  • Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量である。Ftarget = α Flimitとし、係数αには標準値0.8を用いた。
  • Fcurrentは2014年のFを指す
  • 漁獲割合は2016年漁獲量/資源量、F値は各年齢の平均値である
  • 将来漁獲量及び評価は再生産成功率の変動を考慮した1,000回シミュレーションから算定した。将来漁獲量の幅は80%区間を示す
  • 漁獲シナリオにある「親魚量の維持」は中長期的に安定する親魚量での維持を指す
コメント
  • 本系群のABC算定には、規則1-1)-(1)を用いた
  • 現状の漁獲圧はBlimitを維持できる可能性が高く、持続的に利用可能な水準である
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「大韓民国及び中華人民共和国等と我が国の水域にまたがって分布し、大韓民国及び中華人民共和国等においても採捕が行われていることから、関係国との協調した管理に向けて取り組みつつ、資源の維持若しくは増大することを基本に、我が国水域への来遊量の年変動も配慮しながら、管理を行う」とされており、親魚量の維持シナリオから得られる漁獲係数以下の漁獲係数であれば資源を維持または増大させることができると考えられる

▲このページのTOPへ

資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

▲このページのTOPへ

期待される管理効果

(1)漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測
設定した加入量の条件のもとでは、F30%SPRで漁獲を続ければ資源量の増加が見込める。
(2)加入量変動の不確実性を考慮した検討
2015年以降の再生産成功率(RPS)として1973~2013年のRPS平均値に対するRPSの比をランダムに抽出し、これに仮定値を乗じたものを与えて1000回の試行を行った。RPSに乗じる親魚量は30万トンを上限とした。F30%SPRでは、親魚量は増加し、約45万トンで横ばいとなる。Fcurrent及びFmedでは、親魚量は緩やかに減少し、Fmedではより変動幅が大きい。

▲このページのTOPへ

資源変動と海洋環境との関係

再生産成功率の変動には海洋環境が深く関わっていると考えられる。2005年を除く1973~2014年の再生産成功率と東シナ海(北緯28度30分、東経125度30分)の3月の平均海面水温(気象庁保有データ)には負の相関がある。2~3月は東シナ海南部においてマアジの主要な産卵場が形成されると考えられており、水温に代表される海洋環境が、初期の生残に大きな影響を与えると想定される。ただし、2005年は3月の海面水温が低かったにもかかわらず、再生産成功率が低かったとみられ、従来の関係からは外れている。

▲このページのTOPへ

執筆者:依田真里・黒田啓行・福若雅章

資源評価は毎年更新されます。