平成27年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 ズワイガニ 魚種写真
学名 Chionoecetes opilio
系群名 日本海系群
担当水研 日本海区水産研究所

生物学的特性

寿命: 10歳以上
成熟開始年齢: 最終脱皮齢期で雄11齢(5%)、12齢(20%)、13齢(100%)、雌11齢(100%)
産卵期・産卵場: 初産卵は夏~秋、経産卵は2~3月、主分布域である水深200~500mのうち浅めの海域
索餌期・索餌場: 分布域全域、脱皮時を除く周年
食性: 甲殻類、魚類、イカ類、多毛類、貝類、棘皮動物など
捕食者: 小型個体はゲンゲ類、カレイ類、ヒトデ類、マダラなど

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漁業の特徴

A海域(富山県以西)ではほとんどが沖合底びき網(沖底)、B海域(新潟県以北)では主に小型底びき網(小底)と刺網によって漁獲され、他にはかにかご等による。農林水産省令により、A海域の漁期は雄で11月6日~翌年3月20日、雌で11月6日~翌年1月20日、B海域では雌雄とも10月1日~翌年5月31日と定められている。両海域とも甲幅90mm未満の雄と未成体雌の漁獲は禁止されている。さらにA海域では、初産雌(アカコ)の禁漁、漁期の短縮、禁漁区の設定、甲幅制限および航海あたりの漁獲量の上限などの、漁業者による自主規制を設けている。A海域では、我が国の他、韓国によっても漁獲されている。

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漁獲の動向

本系群の漁獲量のほとんどをA海域が占める。1970年以前には両海域合わせて約1.5万トンに達したが、1990年代初めには2,000トン以下に減少した。その後増加し、2007年には5,200トンになったが、近年は再び減少して、2014年(暦年)は3,600トン(A海域:3,300トン、B海域:300トン)であった。韓国の漁獲量は2007年をピークに減少し、2014年は2,400トンであり、この中には日韓暫定水域内のA海域における雄の漁獲が含まれている。

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資源評価法

資源水準は、A海域では沖底、B海域では沖底と小底の漁獲統計より求めた、長期的な資源密度指数(漁区別CPUEの総和÷有漁漁区数)の推移から判断した。資源動向は、A海域ではトロール調査、B海域ではかにかご調査による推定資源量から判断した。

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資源状態

資源水準は、A海域では1970年以降、B海域では1978~2009年における資源密度指数の最高値と0の間を3等分し、上から高位、中位、低位と判断した。A海域では、高豊度の年級群が複数加入したことにより、2002年以降の資源密度指数は50kg前後で安定している。2014年は53kgで、資源水準は中位と判断した。資源量は2008年に減少し、その後は増加と減少を繰り返している。2015年の資源量は17,600トンであった。直近5年(2011~2015年)の資源量の推移から、動向は横ばいと判断した。なお、漁獲圧は長期的には減少傾向にある。 Blimit は資源水準が中位に回復した2002年の漁期後親魚量(2,400トン)とし、2015年の漁期後親魚量(2,500トン)はBlimitをわずかに上回っている。B海域では、1990年代中頃から資源密度指数は高い水準にあり、資源水準は高位と判断した。また、直近5年(2010~2014年)の資源量の推移から動向は減少と判断した。
A海域 B海域

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管理方策

A海域では、2015年の漁期後親魚量がBlimitをわずかに上回っており、トロール調査の結果から推定される2014~2018年の平均的な加入の下では、現状の漁獲圧を維持することで親魚量の維持および増加が可能と考えられる。 B海域では、漁獲圧は雄で低いものの、雌では上昇しており、雌では上昇した漁獲圧を下げることが望ましい。A海域では親魚量の維持・増加を目指す漁獲シナリオを、B海域では現状の漁獲圧の維持に加え、適度な漁獲圧による漁獲や親魚量の確保を目指す漁獲シナリオに基づき、2016年漁期ABCを算定した。

A海域(富山県以西)  
漁獲シナリオ
(管理基準)
Limit/
Target
F値
(ミズガニ, カタガニ, 雌)
(Fcurrentとの比較)
漁獲割合
(%)
(雄, 雌)
将来漁獲量
(百トン)
確率評価
(5年後)
(%)
2016年漁期ABC
(雄, 雌)
(百トン)
5年後
(雄, 雌)
5年平均
(雄, 雌)
2015年
親魚量を
維持
Blimitを
維持
親魚量の増大
(0.58Fcurrent)
Limit 0.12
(0.025, 0.373, 0.207)
(0.58Fcurrent)
12
(9, 19)
23~35
(13~20,
9~16)
27
(15, 11)
100 100 21
(13, 9)
Target 0.10
(0.020, 0.298, 0.166)
(0.47Fcurrent)
10
(8, 15)
20~31
(12~18,
8~13)
23
(13, 10)
100 100 18
(10, 7)
2013年の
親魚量の維持
(Fsus1')
Limit 0.17
(0.035, 0.513, 0.286)
(0.80Fcurrent)
15
(12, 25)
26~42
(15~24,
11~19)
33
(19, 14)
99 99 28
(17, 12)
Target 0.13
(0.028, 0.411, 0.228)
(0.64Fcurrent)
13
(10, 20)
24~37
(14~21,
10~16)
28
(16, 12)
97 100 23
(14, 10)
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Limit 0.21
(0.044, 0.642, 0.357)
(1.00Fcurrent)
18
(14, 30)
28~46
(16~26,
12~21)
37
(21, 16)
95 96 34
(20, 14)
Target 0.17
(0.035, 0.513, 0.286)
(0.80Fcurrent)
15
(12, 25)
26~42
(15~24,
11~19)
33
(19, 14)
99 99 28
(17, 12)
2014年の
親魚量の維持
(Fsus2')
Limit 0.24
(0.050, 0.735, 0.409)
(1.15Fcurrent)
21
(16, 34)
30~49
(17~28,
12~22)
40
(23, 18)
89 91 38
(22, 16)
Target 0.19
(0.040, 0.588, 0.327)
(0.91Fcurrent)
17
(14, 28)
27~45
(16~25,
12~20)
36
(20, 15)
97 98 32
(18, 13)








2016年漁期
算定漁獲量
(百トン)
現状の
親魚量の維持
(2015年親魚量)
(Fsus3')
Limit 0.33
(0.070, 1.021, 0.568)
(1.59Fcurrent)
26
(20, 43)
32~59
(19~32,
13~25)
47
(27, 20)
50 57 48
(28, 20)
Target 0.26
(0.056, 0.817, 0.455)
(1.27Fcurrent)
22
(17, 37)
30~51
(17~29,
13~23)
42
(24, 18)
81 85 41
(24, 17)
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量である
  • Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大が期待されるF値による漁獲量である。Ftarget = α Flimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • Fcurrentは、2012~2014年漁期の漁獲係数の平均
  • 将来漁獲量において、5年後は2020年の漁獲量の上側および下側10%を、5年平均は2016~2020年の平均漁獲量をそれぞれ示す
  • 確率評価は雌に対しての値である
  • 現状親魚量は2015年の漁期後に想定される11齢雌資源量(2,500トン)を、Blimitは2002年の漁期後11齢雌資源量(2,400トン)をそれぞれ示す
  • 年は漁期年(7月~翌年6月)
  • 漁獲シナリオ(管理基準)の設定については以下の通りである
  • ・親魚量の増大(0.58Fcurrent):2020年の漁期後親魚量が2004年(近年では2007年の次に高い値)と同値となるF値で漁獲する
    ・親魚量の維持:2020年の漁期後親魚量が2013年(Fsus1’)、2014年(Fsus2’)もしくは現状(2015年、Fsus3’)と同値となるF値で漁獲する
コメント
  • 本系群のABC算定には、規則1-3)-(2)を用いた
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「資源の維持若しくは増大を基本方向として、安定的な漁獲量を継続できるよう管理を行うものとする」とされており、現状の漁獲圧を維持すれば、資源を維持または増大させることができると考えられる
  • ABC算定規則では、Fsusは「仮定された再生産関係のもとで、資源の現状を維持するF」とされている。本評価では再生産関係は用いていないが、若齢の現存尾数から加入を予測している。したがって、「仮定された加入状況のもとで、資源の現状を維持するF」としてFsus’とした

B海域(新潟県以北)      
漁獲シナリオ
(管理基準)
Limit/
Target
F値
(雄, 雌)
(Fcurrentとの
比較)
漁獲割合
(%)
(雄, 雌)
将来漁獲量
(トン)
確率評価
(5年後)
(%)
2016年漁期ABC
(雄, 雌)
(トン)
5年後
(雄, 雌)
5年平均
(雄, 雌)
2014年
親魚量を
維持
Blimitを
維持
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Limit 0.14
(0.12, 0.38)
(1.00Fcurrent)
13
(11, 32)
- - - - 390
(290, 100)
Target 0.12
(0.10, 0.31)
(0.80Fcurrent)
11
(9, 26)
- - - - 320
(240, 80)
適度な
漁獲圧による
漁獲
(F0.1)
Limit 0.16
(0.16, 0.19)
(1.14Fcurrent)
15
(15, 17)
- - - - 440
(390, 50)
Target 0.13
(0.13, 0.15)
(0.91Fcurrent)
12
(12, 14)
- - - - 360
(320, 40)
親魚量の確保
(F30%SPR)
Limit 0.22
(0.22, 0.22)
(1.56Fcurrent)
20
(20, 20)
- - - - 590
(520, 60)
Target 0.18
(0.18, 0.18)
(1.25Fcurrent)
16
(16, 16)
- - - - 480
(430, 50)
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量である
  • Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量である。Ftarget = α Flimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • Fcurrentは、2010~2014年漁期の漁獲係数の平均
  • 年は漁期年(7月~翌年6月)
コメント
  • ABCの算定には、規則1-3)-(2)を用いた
  • 再生産関係が不明であり、漁獲対象前の資源尾数が推定できないことから、将来予測は行っていない
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「資源の維持若しくは増大を基本方向として、安定的な漁獲量を継続できるよう管理を行うものとする」とされており、雄では現状の漁獲圧の維持で、雌では現状の漁獲圧を超えなければ資源への悪影響はないと考えられる

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

(1)A海域における漁獲シナリオに対応したF値による資源量(親魚量)及び漁獲量の予測
2014~2018年の平均加入量を仮定して将来予測を行った。資源量はすべてのシナリオで2017年まで増加した後、横ばいからやや減少、親魚量はいずれのシナリオでも2016年と2017年に増加し、以後はほぼ横ばいとなる。漁獲量は2016年以降、全てのシナリオで増加する(参考値であるFsus3'を除く)。
(2)A海域における加入量変動の不確実性を考慮した検討
直近5年(2016~2020年)の加入量変動を仮定してシミュレーションを行った。5年後に2015年漁期後親魚量(2,500トン)を維持できる確率は、最も漁獲圧の低いシナリオ(0.58Fcurrent)で100%、最も漁獲圧の高いシナリオ(Fsus2')で89%であった。

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資源変動と海洋環境との関係

本系群の長期的な資源変動は、寒冷期には資源が減少して低水準となり、温暖期には増加傾向となる。これらの資源変動の要因を明らかにするため、約3ヶ月の浮遊幼生期における生残に海洋環境が関与し、寒冷期には幼生が生残に不利な環境に輸送されることを仮説として調査中である。

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執筆者:上田祐司・養松郁子・藤原邦浩・松倉隆一・山田達哉・山本岳男

資源評価は毎年更新されます。