平成27年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 スルメイカ 魚種写真
学名 Todarodes pacificus
系群名 冬季発生系群
担当水研 北海道区水産研究所

生物学的特性

寿命: 約1年
成熟開始年齢: 雄は6~7カ月、雌は7~8カ月
産卵期・産卵場: 12~翌年3月、主に東シナ海
索餌期・索餌場: 夏~秋季、主に常磐~北海道沖
食性: 沿岸では小型魚類、沖合では甲殻類
捕食者: 大型魚類、海産ほ乳類

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漁業の特徴

主にいか釣りによって漁獲されるが、近年、底びき網、定置網、まき網などによる漁獲量が増加しており、2014年の釣り以外の漁獲は全体の57%を占める。主漁場は道東から北方四島の太平洋側である。本系群は我が国の他、韓国、中国、北朝鮮によって漁獲されている。

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漁獲の動向

本系群の漁獲量(日本および韓国)は1991年以降概ね20万~30万トンで推移しており、2014年漁期(4~翌年3月)の漁獲量は21.6万トンであった。同期間における我が国の漁獲量は概ね10万~20万トンであり、2014年は13.3万トンであった。2014年の韓国による漁獲は8.3万トンであった。我が国の漁獲量は系群全体の約60%を占めている。

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資源評価法

6~12月の宮城県~北海道太平洋側主要港における小型いか釣り漁船のCPUE(千尾/隻/日)を用い、1979~2014年の資源量を推定した。2011~2014年のCPUEは、東日本大震災の影響による出漁隻数の割合の変化を考慮した補正値を用いた。2015年の資源量は調査船調査の結果から推定した。親魚量は漁獲量および自然死亡係数(0.6/6ヶ月)から推定した。

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資源状態

資源量は1981~1988年は30万トン以下で推移していたが、1989年以降増加し、1996年には134.0万となった。その後は概ね80万~110万トンで推移しており、2015年は79.6万トンであった。資源尾数、親魚尾数も資源量と同様の傾向で推移し、2015年はそれぞれ25.7億尾、9.4億尾であった。Blimitは高い再生産成功率があったときに高い加入量が期待できる親魚量(19.1万トン、6.2億尾)とした。2015年の親魚尾数はBlimitを上回っている。資源水準は、1979~2015年の過去37年間の資源尾数について、最高値と最低値の間を3等分し、高位、中位、低位とした。2015年の資源水準は中位、動向は5年間(2011~2015年)の資源尾数の推移から減少と判断した。

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管理方策

1990年以降の本系群はその資源の再生産に好適な環境下にあると判断される。2015年漁期終了後の親魚尾数はBlimitを上回っていることから、管理方策は親魚量の維持を基本方向とし、現状の漁獲圧を維持(Fcurrent)および親魚量を維持(Fmed)する漁獲シナリオを用いて2016年漁期ABCを算定した。
 
漁獲シナリオ
(管理基準)
Limit/
Target
F値
(Fcurrentとの
比較)
漁獲割合
(%)
将来漁獲量
(千トン)
確率評価
(%)
2016年漁期ABC
(千トン)
5年後 5年平均 2015年
親魚量を
維持
(5年後)
Blimitを
維持
(5年後)
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Limit 0.41
(1.00Fcurrent)
25 100

568
255 60 81 203
Target 0.33
(0.80Fcurrent)
21 116

654
255 81 93 169
親魚量の維持
(Fmed)
Limit 0.44
(1.07Fcurrent)
26 94

534
253 53 75 215
Target 0.35
(0.86Fcurrent)
22 112

631
256 76 91 179
定義
  • Limitは各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量で、Targetは資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量である。Ftarget = αFlimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • 2016年漁期は2016年4月~2017年3月
  • Fcurrentは直近3年間(2012~2014年)のFの平均値
  • 漁獲シナリオにある「親魚量の維持」は、中長期的に安定する資源量での維持を指し、Fmedは1990~2014年の再生産成功率の中央値に基づいて算定した
  • 漁獲割合は2016年漁期の漁獲量/資源量
  • 将来漁獲量並びに評価値は、1990年以降のRPS値(再生産成功率)を無作為抽出するシミュレーション(100,000回試行)により算定した
  • 将来漁獲量の範囲は80%区間を示す
  • 表中にある2015年親魚量は2015年漁期終了時の親魚量(29.1万トン)、将来漁獲量の5年後は2020年、5年平均は2016~2020年の平均値である
  • 評価の対象とした5年後の親魚量は、2020年漁期終了時の予測親魚量である
コメント
  • 本系群のABC算定には基本規則1-1)-(1)を用いた
  • 現状の漁獲圧は資源を悪化させる状況にはないと判断される
  • 海洋環境の変化によって水温・産卵場形成の変化等、資源動向が変化する兆候が観察された場合は、加入量予測に用いる再生産関係およびBlimitの値を変更する必要がある
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「高、中位にある資源が海洋環境の変化により大幅減少に転じる可能性があることから、資源動向の把握に努めつつ、海洋環境条件に応じた資源水準の維持を基本方向として管理を行う。資源水準の変動に際しては、関係漁業者の経営への影響が大きくなりすぎないように配慮を行うものとする。」とされており、再生産に好適な海洋環境が継続する場合、親魚量維持シナリオの漁獲圧以下に維持すれば、資源を維持または増大することができると考えられる

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

(1)漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測
1990~2014年の再生産成功率(加入尾数/親魚尾数)の中央値と前年の親魚尾数を用いて2020年までの資源量と漁獲量を予測した。FmedおよびFcurrentで漁獲した場合、2020年の資源量はそれぞれ92.2万トン、82.0万トンになると推定された。漁獲量は、Fmedで漁獲した場合は横ばいで推移し、FcurrentはFmedを下回っていることから資源量の増加が見込まれ、Fcurrentで漁獲した場合の漁獲量は将来的に増加する。
(2)加入量変動の不確実性を考慮した検討
再生産成功率の年変動が親魚尾数や資源量の動向に与える影響をみるために、2016年以降の再生産成功率に1990~2014年に観測された値をリサンプリングし、10万回のシミュレーションを行った。2016~2020年漁期の平均漁獲量は、FcurrentおよびFmedの各シナリオで漁獲した場合、25.5万トン、25.3万トンとなった。なお、2020年の親魚量がBlimitを維持する確率は、Fcurrentで81%、Fmedで75%であった。低い水準のRPSが連続的に発生するケースでは資源水準が急激に低下することがあり、加入量の不確実性により5年後の親魚尾数および漁獲量はいずれのシナリオにおいても大きく変化する。

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資源変動と海洋環境との関係

スルメイカの資源量は、海洋環境の変化によって変動することが報告されている。1988/1989年にレジームシフトと呼ばれる中長期的な海洋環境の変化が発生し、北西太平洋では寒冷期から温暖期に移行したと考えられている。この温暖期において、資源の増加と再生産可能海域の拡大が同調していたことから、海洋環境が温暖な年代はスルメイカにとり好適な環境であると考えられている。

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執筆者:加賀敏樹・岡本 俊・山下紀生・船本鉄一郎

資源評価は毎年更新されます。