平成27年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

[詳細版へ]
標準和名 スルメイカ 魚種写真
学名 Todarodes pacificus
系群名 秋季発生系群
担当水研 日本海区水産研究所

生物学的特性

寿命: 約1年
成熟開始年齢: 雄は約9カ月、雌は約10カ月以降
産卵期・産卵場: 10~12月、北陸沿岸~東シナ海
索餌期・索餌場: 春~夏季、主に日本海沖
食性: 沿岸域では小型魚類、沖合域では動物プランクトン
捕食者: 主に大型魚類、海産ほ乳類

▲このページのTOPへ

漁業の特徴

主に日本海において、いか釣り漁業で漁獲される。沿岸域の漁獲物は主に生鮮で、沖合域の漁獲物は主に冷凍で水揚げされるが、 我が国の他、韓国、中国、北朝鮮によっても漁獲されている。このうち、韓国による秋季発生系群の漁獲量は多く、近年では我が国を上回っている。さらに、中国の漁獲量もかなり多いことが示唆されるものの、正確な情報は得られていない。

▲このページのTOPへ

漁獲の動向

我が国における本系群の漁獲量は1970年代半ば以降に減少し、1986年には5.4万トンに落ち込んだ。その後は増加し、1990年代の漁獲量は11万~18万トンとなった。2000年以降は再び減少傾向となり、2013年及び2014年(3.9万トン)には4万トンを下回り、過去30年間で最低の水準になっている。なお、2014年の韓国における本系群の漁獲量は7.2万トンで、全体の60%以上を占めている。

▲このページのTOPへ

資源評価法

漁場一斉調査・幼生分布調査結果を用いて、資源状況、今後の資源動向を判断した。毎年6~7月に自動いか釣り機による試験操業を実施し、全調査点のCPUE(釣機1台1時間あたりの採集尾数)の平均値を資源量指数として、各年の資源量を推定した。推定された資源量から資源水準及び動向を判断するとともに再生産関係を用いて管理基準値の推定と資源量予測を行った。

▲このページのTOPへ

資源状態

資源量は1980年代前半に減少したが、1980年代後半以降増加し、2003年以降は概ね100万~150万トンで推移している。2014年の資源量は過去最高の234.6万トンと推定されたが、2015年は118.6万トンに半減した。親魚尾数も資源量と同様に推移し、2015年は2014年から半減して20.6億尾(57.6万トン)と予測される。Blimitは高い加入量が期待できる親魚量の閾値(40.3万トン)とし、2015年の親魚量はこの値を上回る。資源量水準は、資源量が少なかった1980年代の平均値(51.3万トン)を低・中位の境界、資源量が増加した1990年代の平均値(108.7万トン)を中・高位の境界とし、2015年の資源量から高位と判断、動向は近年5年(2010~2014年)の資源量の推移から横ばいと判断した。

▲このページのTOPへ

管理方策

本年の調査結果では、スルメイカの資源水準の低下を示唆する産卵場形成位置等の生態的な変化は観測されておらず、資源量がすぐに低位水準になるような海洋環境ではないと判断される。2015年の親魚量がBlimitを上回っていることから、現状の漁獲圧を維持するシナリオ(Fcurrent)及び親魚量の維持シナリオ(Fmed)で2016年のABCを算定した。2016年の資源量は、2015年漁期後の親魚量(57.6万トン)と過去23年間(1993~2015年)の再生産成功率の中央値(2.30)から、132.6万トンと予測される。
漁獲シナリオ
(管理基準)
Limit/
Target
F値
(Fcurrentとの
比較)
漁獲割合
(%)
将来漁獲量
(千トン)
確率評価
(%)
2016年漁期ABC
(千トン)
5年後 5年平均 2015年
親魚量を
維持
(5年後)
Blimitを
維持
(5年後)
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Limit 0.12
(1.00Fcurrent)
8 54

326
162 74 86 112
Target 0.10
(0.80Fcurrent)
7 48

281
134 77 89 91
親魚量の維持
(Fmed)
Limit 0.23
(1.92Fcurrent)
15 56

554
263 58 73 205
Target 0.19
(1.26Fcurrent)
13 59

470
227 68 80 168
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量である
  • Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量である。Ftarget=αFlimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • 2016年漁期は2016年4月~2017年3月
  • 現状の漁獲圧を示すFcurrentは過去3年間(2012~2014年)の平均のF値
  • 漁獲シナリオにおける「親魚量の維持(Fmed)」は、中長期的に安定する親魚量での維持を指し、1993~2015年(過去23年間)の再生産成功率(RPS)の中央値に基づいて算定した
  • 漁獲割合は2016年漁期漁獲量/資源量
  • 将来漁獲量及び評価値は、過去23年間のRPSを無作為抽出するシミュレーション(1,000回試行)により算出した
  • 将来漁獲量の範囲は80%区間を示す
  • 将来漁獲量の「5年後」は2020年、「5年平均」は2016~2020年の平均値、評価の「2015年親魚量」は2015年漁期終了時の親魚量(576千トン)である
  • 評価の対象とした5年後の親魚量は、2020年漁期終了時の予測親魚量である
コメント
  • 本系群のABC算定には規則1-1)-(1)を用いた
  • 現状の漁獲圧は資源を悪化させる状況にはないと判断される
  • 漁獲量の年変動は大きく、資源量は短期的に変動すると推測される
  • 海洋環境によって資源動向が変化する兆候が観察された場合は加入量予測に用いる再生産関係及びBlimit等を変更する必要がある
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「高、中位にある資源が海洋環境の変化により大幅減少に転じる可能性があることから、資源動向の把握に努めつつ、海洋環境条件に応じた資源水準の維持を基本方向として管理を行う。資源水準の変動に際しては、関係漁業者の経営への影響が大きくなりすぎないように配慮を行うものとする」とされており、現状の好適な海洋環境が継続すれば親魚量の維持シナリオ以下に漁獲圧を維持することで、資源水準を高、中位に維持可能と考えられる

▲このページのTOPへ

資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

▲このページのTOPへ

期待される管理効果

(1)漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測
今後の資源量は、親魚量の維持シナリオ(Fmed)を除いて2016年以降増加し、現状の漁獲圧(Fcurrent)を維持した場合では2020年には229万トンに達すると予測される。漁獲量も同様に、親魚量の維持シナリオ(Fmed)以外は、2016年以降増加すると計算された。
(2)加入量変動の不確実性を考慮した検討
加入量の不確実性によって漁獲量や親魚量の予測値は大きく変化した。各漁獲シナリオの5年後における漁獲量の変動幅(80%区間)は、現状の漁獲圧の維持シナリオ(Fcurrent)では、Limit値で5.4万~32.6万トン、Target値で4.8万~28.1万トン、親魚量の維持シナリオ(Fmed)では、Limit値で5.6万~55.4万トン、Target値で5.9万~47.0万トンであった。また、5年後にBlimitを維持する確率は、現状の漁獲圧の維持シナリオ(Fcurrent)では、Limit値で86%、Target値で89%、親魚量の維持シナリオ(Fmed)では、Limit値で73%、Target値で80%であった。

▲このページのTOPへ

資源変動と海洋環境との関係

スルメイカの資源量は、漁獲の影響に加えてレジームシフトと呼ばれる中長期的な海洋環境の変化と、年による短期的な海洋環境の変化に影響される。特に1989年の北西太平洋における冬季水温の上昇は、スルメイカの主産卵場の形成位置や回遊経路、主発生時期の変化と関連し、1990年代以降にスルメイカの資源量が増加した主要因と考えられている。そのため、中長期的な海洋環境の変化やスルメイカの生態的な変化を把握することが、今後の資源変動を把握する上で重要である。

▲このページのTOPへ


執筆者:木所英昭・後藤常夫・高原英生・松倉隆一

資源評価は毎年更新されます。