平成28年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 スルメイカ 魚種写真
学名 Todarodes pacificus
系群名 冬季発生系群
担当水研 北海道区水産研究所

生物学的特性

寿命: 約1年
成熟開始年齢: 雄は6~7カ月、雌は7~8カ月
産卵期・産卵場: 12~翌年3月、主に東シナ海
食性: 沿岸では小型魚類、沖合では甲殻類
捕食者: 大型魚類、海産ほ乳類等

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漁業の特徴

主にいか釣りによって漁獲されるが、近年、底びき網、定置網、まき網などによる漁獲量が増加しており、2015年の釣り以外の漁獲は全体の57%を占める。本系群は我が国の他、韓国、中国、北朝鮮によって漁獲されている。

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漁獲の動向

漁獲量(日本および韓国)は1980年代は低水準で推移し、1989年以降に増加傾向に転じ、近年は概ね18万~29万トンで推移しており、2015年漁期(4~翌年3月)の漁獲量は18.3万トンであった。2015年の我が国の漁獲量は9.7万トンで、韓国の漁獲量は8.6万トンであった。2015年の我が国による漁獲量が系群全体の漁獲量に占める割合は約53%で近年5年平均(63%)を下回った。

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資源評価法

平成28年度資源評価から資源量指標値には、7~12月の宮城県~北海道太平洋側主要港における標準化した小型いか釣り船のCPUE(1日1隻当たり漁獲尾数、千尾/隻日)を用いることとした。資源尾数は資源量指標値と比例関係にあると仮定して、標準化CPUEを用いて1979~2015年の資源尾数を推定した。親魚尾数は漁獲尾数および自然死亡係数(0.6/6ヶ月)から推定した。

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資源状態

資源量は1981~1988年は30万トン以下で推移していたが、1989年以降増加し、1996年には102.8万トンに達した。その後は概ね50万~100万トンで推移していたが、2016年は33.4万トンに減少した。資源尾数、親魚量も資源量と同様の傾向で推移し、2016年はそれぞれ10.8億尾、3.3億尾(10.4万トン)であった。Blimitは高い再生産成功率があったときに高い加入量が期待できる親魚量(5.2億尾)とした。2016年の親魚尾数は3.3億尾でBlimitを下回っている。資源水準は、1979~2016年の過去38年間の資源尾数を、最高値と最低値の間を3等分して、高位、中位、低位とした。2016年の資源水準は低位、動向は直近5年間(2012~2016年)の推移から減少と判断した。また、漁獲割合の推移から、近年の漁獲圧は上昇傾向を示している。

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管理方策

2016年漁期終了時の親魚尾数はBlimitを下回っていることから、親魚量の増大を管理目標とし、Fmed(Fの基準値:中長期的に安定する親魚量の維持を図るシナリオ)を2016年漁期終了時の親魚尾数とBlimitの比(0.65)で引き下げたFrecおよび、5年後に親魚尾数がBlimitに回復することが期待できるFrec5yrの漁獲シナリオを用いて2017年漁期ABCを算定した。 これらのシナリオと併せて、Fmedと現状の漁獲圧を維持するFcurrentでの算定漁獲量も検討した。なお、不適なレジームへの移行を窺わせる状況が出現しているが、現段階では判断するための情報が不足しており、加えて、調査結果についても過去の好適レジームで観測された範囲内にほぼ含まれていたこと等を勘案し、本年度の資源評価においては、不適なレジームに移行したと判定しなかった。
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target/Limit F値
(Fcurrentとの比較)
漁獲割合
(%)
2017年
漁期ABC
(千トン)
Blimit=
160千トン
親魚量5年後
(千トン)
親魚量の増大
(B/Blimit×Fmed)
(Frec)
Target 0.24
(0.42Fcurrent)
16 47 312
Limit 0.30
(0.52Fcurrent)
19 57 232
親魚量の増大
(5年でBlimitへ回復)
(Frec5yr)
Target 0.30
(0.52Fcurrent)
19 57 232
Limit 0.37
(0.65Fcurrent)
23 69 160




2017年漁期
算定漁獲量
(千トン)

親魚量の維持
(Fmed)
Target 0.37
(0.65Fcurrent)
23 68 164
Limit 0.46
(0.81Fcurrent)
27 81 104
現状の漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Target 0.45
(0.80Fcurrent)
27 81 106
Limit 0.57
(1.00Fcurrent)
32 96 60
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量。Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量。Ftarget = α Flimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • 現状の漁獲圧を示すFcurrentは直近3年間(2013~2015年)のFの平均である
  • 漁獲シナリオにある「親魚量の増大」は、中長期的に安定する親魚量を維持する漁獲圧であるFmedを2016年漁期終了時の親魚尾数とBlimitの比(0.65)で引き下げた漁獲シナリオおよび5年でBlimitに親魚量を回復させる漁獲シナリオである
  • Fmedは1990~2015年の再生産成功率(RPS)の中央値に基づいて算定した
  • 評価の対象とした5年後の親魚量は、2021年漁期終了時の予測親魚量である
  • 2017年漁期は2017年4月~2018年3月
コメント
  • 本系群のABC算定には、規則1-1)-(2)を用いた
  • 2016年漁期終了時の親魚量は3.3億尾(10.4万トン)
  • 近年の漁獲圧は上昇傾向を示しており、漁獲による親魚量の減少に留意し、今後の資源動向について十分注意を払う必要がある
  • 海洋環境の変化によって、水温・産卵場形成の変化等、資源動向が変化したと判断された場合は、加入量予測に用いる再生産関係およびBlimitの値等を変更する必要がある
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「高、中位にある資源が海洋環境の変化により大幅減少に転じる可能性があることから、資源動向の把握に努めつつ、海洋環境条件に応じた資源水準の維持を基本方向として管理を行う。資源水準の変動に際しては、関係漁業者の経営への影響が大きくなりすぎないように配慮を行うものとする」とされているが、本系群の親魚量はBlimitを下回っていることから、資源の回復を図るよう管理をすべきと考えられる

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

(1)漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測
1990~2015年の再生産成功率(加入尾数/親魚尾数)の中央値と前年の親魚尾数を用いて2021年までの資源量と漁獲量を予測した。Fmedで漁獲した場合、資源量と漁獲量は横ばいで推移し、Fmed未満の漁獲圧では資源量の増加が見込まれる。Fcurrentで漁獲した場合、将来の資源量および漁獲量は減少する。
(2)加入量変動の不確実性を考慮した検討
再生産成功率の年変動が親魚尾数や資源量の動向に与える影響をみるために、2017年以降の再生産成功率に1990~2015年に観測された値をリサンプリングし、10万回のシミュレーションを行った。2017~2021年漁期の平均漁獲量は、FrecおよびFrec5yrの各シナリオで漁獲した場合、共に13.5万トンとなった。なお、2021年の親魚量がBlimitを維持する確率は、Frecで82%、Frec5yrで68%であった。低い水準の再生産成功率が連続的に発生するケースでは資源水準が急激に低下することがあり、加入量の不確実性により5年後の親魚尾数および漁獲量はいずれのシナリオにおいても大きく変化する。

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資源変動と海洋環境との関係

スルメイカの資源量は、海洋環境の変化によって変動することが報告されている。1988/1989年にレジームシフトと呼ばれる中長期的な海洋環境の変化が発生し、北西太平洋では寒冷期から温暖期に移行したと考えられている。この温暖期において、資源の増加と再生産可能海域の拡大が同調していたことから、海洋環境が温暖な年代はスルメイカにとり好適な環境であると考えられている。近年スルメイカにとっての不適なレジームに移行した可能性を示唆する現象が見られており、今後の海洋環境と再生産動向には十分な注意が必要と思われる。

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執筆者:加賀敏樹・山下紀生・岡本 俊・船本鉄一郎

資源評価は毎年更新されます。