平成28年度資源評価報告書(ダイジェスト版)
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標準和名
カタクチイワシ
学名
Engraulis japonicus
系群名
太平洋系群
担当水研
中央水産研究所
生物学的特性
寿命:
4歳
成熟開始年齢:
1歳(100%)
産卵期・産卵場:
冬季を除くほぼ周年で4~8月が盛期、沿岸~沖合の広い海域
食性:
動物プランクトン等
捕食者:
中大型の浮魚類、鯨類
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漁業の特徴
仔魚期のシラスは福島県~鹿児島県でシラス船曳網等により春から秋に漁獲される。未成魚・成魚は主に常磐・房総の大中型まき網により冬春季にかけ漁獲される。大中型まき網の漁期は12~翌年6月である。沿岸の定置網等でも漁獲される。資源量が多い年には9~11月に道東から三陸、1~5月に熊野灘や日向灘でも多獲される。黒潮・親潮移行域に分布する沖合域の魚群はほとんど漁獲対象となっていない。
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漁獲の動向
漁獲量は1989年まで数万トンで推移していたが、1990年に太平洋北区(青森県~茨城県)で急増し20.0万トンを超え、2003年には過去最高の40.8万トンとなった。漁獲量はその後減少し、2015年は5.9万トンであった。海区別では、太平洋中区(千葉県~三重県)が漁獲量の大部分を占めており、太平洋南区(和歌山県~宮崎県)の漁獲量は少ない。近年、太平洋中区では房総・常磐海域(千葉県、茨城県、福島県)の漁獲割合が低下し、2013年以降、東海海域(愛知県、三重県)で漁獲割合が増加傾向にある。
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資源評価法
年齢別漁獲尾数に基づいたコホート解析により資源量(親魚量)を推定した。コホート解析の際には、常磐房総海域の漁獲動向や北西太平洋秋季浮魚資源調査CPUEを指標値とした。
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資源状態
資源量は2003年まで増加傾向であったが、2003年の149.0万トンをピークに減少傾向となり、2015年は15.0万トンと推定された。2011年まで行われた沖合域の越冬期浮魚類現存量推定調査でも、2003年以降沖合域の分布量の顕著な減少が示されている。親魚量は、2004年の89.6万トン以降減少傾向で、2015年は6.7万トンであった。再生産関係から見て良好な加入を期待しにくくなる親魚量の閾値13.0万トンをBlimitとした。過去37年間の親魚量の最低と最高の三等分の上位1/3を高位とし、中位と低位の境界はBlimitとした。2015年の親魚量はBlimitを下回っていることから、資源水準は低位、動向は直近5年間(2011~2015年)の親魚量の推移から減少と判断した。2015年の親魚量が大きく減少し、資源水準が変化したが、漁業だけでなく、気候変動が影響している可能性がある。
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管理方策
2015年の親魚量はBlimitより低いことから、親魚量の早期回復を管理目標として、現状の資源量を維持する漁獲係数(Fmed =2.25)をB/Blimitの比率で引き下げた漁獲係数(Frec)を管理基準として2017年ABCを算出した。現状の漁獲圧(2013~2015年平均のF=2.13)はF0.1やFmaxより高い。調査等により、沖合域に分布・回遊する資源が減少傾向であることが示されており、沿岸域に分布する資源の漁業への影響が高まると予想される。現状では、太平洋系群の加入量とシラス漁獲量に関係は認められず、シラス漁獲が資源に及ぼす影響は少ないと考えられるが、今後もシラス漁業の影響を注視する必要がある。
管理基準
Target/Limit
F値
漁獲割合
(%)
2017年ABC
(千トン)
Blimit=
130千トン
親魚量5年後
(千トン)
Frec
Target
0.90
23
32
391
Limit
1.13
26
37
276
本系群のABC算定には規則1-1)-(2)を用いた
Limitは、管理基準の下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量、Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、管理基準の下でより安定的な資源の回復が期待されるF値による漁獲量。Ftarget = α Flimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
2015年親魚量は6.7万トン
基準値(Fmed)をB/Blimitの比率で引き下げた漁獲係数F(Frec)を管理基準値とした
Fmedは1978,1979,1981~1988年の再生産成功率の中央値に相当するF値(2.25)
F値は漁獲の主対象群となる1歳魚の漁獲係数
漁獲割合は2017年の漁獲量/資源量
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資源評価のまとめ
資源水準は低位、動向は減少
2015年の資源量は15.0万トン、親魚量は6.7万トンでBlimit(13.0万トン)を下回っている
管理方策のまとめ
資源を回復させるFrec(=Fmed×B/Blimit)を管理基準として、ABCを算出した
現状の漁獲圧はF0.1やFmaxより高い
沖合域に分布・回遊する資源の減少に伴い、沿岸域に分布する資源の漁業への影響が相対的に高まる
現状のシラス漁業が資源に与える影響は少ないと考えられるが、今後もシラス漁業と加入量の関係を注視する必要がある
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執筆者:上村泰洋・由上龍嗣・渡邊千夏子・古市 生・亘 真吾・岸田 達
資源評価は毎年更新されます。