平成28年度資源評価報告書(ダイジェスト版)
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標準和名
キチジ
学名
Sebastolobus macrochir
系群名
オホーツク海系群
担当水研
北海道区水産研究所
生物学的特性
寿命:
太平洋北部では20歳程度
成熟開始年齢:
不明
産卵期・産卵場:
春季(産卵盛期は4~5月)、産卵場は不明
食性:
魚類、クモヒトデ類など
捕食者:
不明
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漁業の特徴
はえ縄、刺網などの沿岸漁業と沖合底びき網漁業(沖底)により周年漁獲される。1996年以降、オホーツク海において、ロシア漁船がキチジを漁獲しているとみられるが、漁獲実態は不明である。
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漁獲の動向
オホーツク海と根室海峡における沖底と沿岸漁業の漁獲量は、長期的にみて減少傾向にある。1986年に2,000トンを超えていた漁獲量は、2001年には375トンまで減少した。漁獲量はその後増加し、2004年には533トンとなったが、2005年以降は再び減少し、2015年は231トンであった。近年の漁獲量のほとんどは、沿岸漁業によるものである。ロシアの漁獲量は不明である。
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資源評価法
長期間のデータがそろっている漁獲量の推移に基づき、資源水準を判断した。はえ縄漁業の2001~2015年の操業隻数は3~4隻と安定していることから、はえ縄漁業の操業隻数あたりの漁獲量(CPUE )を資源量指標値として資源動向を判断した。また、沿岸漁業の漁獲物から採集した標本と銘柄別水揚げ記録を用いて、漁獲物の体長組成を求め、加入状況を推察した。
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資源状態
過去30年間(1986~2015年)の漁獲量の最高値~最低値を3等分した水準区分から、2015年の資源水準は低位、また、最近5年間(2011~2015年)の資源量指標値の変化から、動向は減少と判断した。体長組成からみて2010~2015年の漁獲物に、明確に豊度の高い年級群の加入を確認できなかった。
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管理方策
資源水準・動向は低位・減少で、かつ2010~2015年の漁獲物に明確に豊度の高い年級群の加入を確認できない。資源に対する漁獲の影響は大きいと推察されることから、漁獲圧を下げ、より多くの親魚を確保することが望ましい。このため、資源水準、および資源量指標値に合わせて漁獲を行うことを管理方策として、2017年ABCを算定した。本資源の資源状態は、極めて低い水準にある。資源状態の改善においては、未成魚が成熟するまで獲り残し、親魚を増加させることが、有効と期待される。そのためには、全般的な漁獲圧削減に加えて、漁獲物のサイズ制限が有効と考えられる。資源評価の精度向上を図る上で、ロシア船の漁獲実態の把握が不可欠である。
管理基準
Target/Limit
F値
漁獲割合
(%)
2017年ABC
(トン)
Blimit=
-
親魚量5年後
(トン)
0.7・Cave3-yr・0.82
Target
-
-
130
-
Limit
-
-
160
-
Limitは、管理基準の下で許容される最大レベルの漁獲量
Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、管理基準の下でより安定的な資源の回復が期待される漁獲量
ABC算定規則2-1)により、ABClimit=δ
1
・Ct・γ
1
、ABCtarget = α ABClimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
δ
1
には0.7(低位水準でCtに3年平均を使う場合の推奨値)を用いた
γ
1
(0.82)は、γ
1
=1+k(b/I)で計算した。kは標準値の1.0とし、b(-4.50)とI(24.67)は資源量指標値の傾きと平均値(直近3年間(2013~2015年))である
Cave3-yr は、2013~2015年の平均漁獲量
2017年ABCは、10トン未満を四捨五入して表示した
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資源評価のまとめ
資源水準は低位、動向は減少
2010~2015年の漁獲物からは、明確に豊度の高い年級群の出現を確認できない
管理方策のまとめ
資源水準、および資源量指標値に合わせて漁獲を行うことを管理方策として2017年ABCを算定した
未成魚が成熟するまで獲り残し、親魚を増加させることが、資源状態の改善に有効に働くと期待される
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執筆者:濱津友紀・森田晶子・船本鉄一郎
資源評価は毎年更新されます。