平成29年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 ズワイガニ 魚種写真
学名 Chionoecetes opilio
系群名 太平洋北部系群
担当水研 東北区水産研究所

生物学的特性

寿命: 10歳以上
成熟開始年齢: 雄甲幅80mm(50%以上)、甲幅110mm以上(ほぼ100%)、雌甲幅68mm(50%以上)、甲幅76mm以上(ほぼ100%)
産卵期・産卵場: 不明
食性: 不明
捕食者: 成熟前の小型個体はマダラ、ゲンゲ類、カレイ類、ガンギエイ類、ヒトデ類など

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漁業の特徴

主に福島県の沖合底びき網により漁獲されるが、ズワイガニを選択的に漁獲する専業船は少なく、他の魚種とともに漁獲される。福島県では重要な資源の一つとなっているが、東日本大震災(震災)後は福島県船の操業は休止しており(2012年11月以降、試験操業を実施)、2011年漁期以降の漁獲はわずかとなっている。1996年に農林水産省令に基づき規制が導入され、本海域の操業期間は12月10日~翌年3月31日で、雄は甲幅8cm未満、雌は外仔を持たない未成熟ガニの漁獲が周年禁止されている。

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漁獲の動向

漁獲量は、1995年漁期(12~翌年3月)に過去最高の353トンに達した後、2000年漁期は107トンまで減少した。その後、2003年漁期、2008年漁期は漁獲量が多かったが、2010年漁期は159トンであった。2011年漁期以降の試験操業による漁獲は僅かであり、2016年漁期は11.1トンであった。漁獲割合についても、2012年漁期以降、低い値に留まっており、2016年漁期は1.8%となった。

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資源評価法

1996年漁期以降の県別漁獲量データおよび1997年以降毎年10~11月に実施している着底トロール調査(青森県~茨城県沖、水深150~900m、2016年は計121地点、内66地点にてズワイガニを採集)から得た資源量推定値(面積-密度法)を用いて資源評価を実施した。

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資源状態

漁獲対象資源量(以下、資源量)は1997~2007年漁期に496~1,777トンの間を変動した後、減少傾向となった。2013年漁期に大きく減少し、2014年漁期は350トンと過去最低となった後、2016年漁期は626トンとなった。親魚量は、2012~2014年漁期後は低い水準となったが、2016年漁期後は180トンであった。過小評価の恐れがある2008年漁期を除く、震災以前の1997~2010年漁期後の親魚量(雌の漁獲対象資源量)の最低値63トンをBlimitとした。2016年漁期後の親魚量はBlimitを上回っている。資源水準は、震災前の1997~2010年漁期の資源量の最高値(2007年漁期の1,777トン)を高位と中位の境界、最低値(1997年漁期の496トン)を中位と低位の境界として判断した。2016年漁期の資源量が626トンであったことから、資源水準は中位と判断した。直近5年間(2012~2016年)の資源量の推移から動向は横ばいと判断した。

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管理方策

親魚量はBlimitを上回っており、資源水準が中位、動向が横ばいと判断されることから、適度な漁獲圧で漁獲することにより、親魚量を確保しつつ、資源を増加させることを管理目標とした。現状の漁獲圧の維持(1.0Fcurrent)をシナリオの一つとしたが、そのF値は震災等の影響で極めて低い値となっている。 加入量を2015~2019年の平均値とした時に2022年漁期まで資源量を一度も減少させることなく増大させるシナリオとして0.9Fave3-yrを資源量の増大シナリオとした。さらに、適度な漁獲圧による漁獲シナリオとして経験的に利用されている生物学的管理基準値(1.0F0.1)を採用した。
資源量(2018)=1,129トンを仮定、 親魚量(2016)=180トン、 Blimit=63トン
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target
/Limit
2018年
漁期ABC
(雄,雌)
(トン)
漁獲割合
(雄,雌)
(%)
F値
(雄,雌)
(現状の
F値からの
増減%)
2022年漁期の
親魚量
(トン)
(80%区間)
確率評価(%)
2022年漁期に
平均親魚量を
維持
2022年漁期に
Blimit
を維持
現状の
漁獲圧の維持
(1.0Fcurrent)
Target 10.4
(9.6, 0.8)
0.9
(1.1, 0.3)
0.0092
(0.012, 0.0029)
(-20%)
399
(281~571)
94 100
Limit 13.0
(11.9, 1.0)
1.1
(1.4, 0.3)
0.012
(0.015, 0.0037)
(±0%)
398
(281~532)
93 100
資源量の増大
(0.9Fave3-yr)
Target 126
(88.5, 37.1)
11.1
(10.6, 12.5)
0.12
(0.12, 0.14)
(+920%)
274
(180~393)
45 100
Limit 155
(109, 45.5)
13.7
(13.1, 15.4)
0.15
(0.15, 0.18)
(+1,174%)
251
(161~360)
34 100
適度な
漁獲圧による漁獲
(1.0F0.1)
Target 141
(107, 34.0)
12.5
(12.8, 11.5)
0.13
(0.14, 0.13)
(+1,051%)
283
(189~429)
47 100
Limit 173
(131, 41.9)
15.3
(15.7, 14.1)
0.17
(0.18, 0.16)
(+1,338%)
261
(170~373)
41 100
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量、Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量
  • Ftarget = α×Flimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • 現状のF値(Fcurrent)は2014~2016年漁期の平均値
  • Fave3-yrは震災前の平均的なF(F2006-2009、2008年漁期を除く)
  • ABC算定年の漁期当初の資源量を推定する際、全てのシナリオでFcurrentから得た漁獲量を与えた
  • 漁獲割合は、2018年漁期の漁獲量/2018年漁期当初の漁獲対象資源量
  • 2017年の加入量は調査から得られた推定値、2018~2019年の加入量は調査から得られた予測値、2020年以降の加入量は調査から得られた2015~2019年の平均値。加入量の不確実性を考慮した予測では、2015~2019年の加入量からリサンプリングした値を加入量として与えた
  • 確率評価は、1,000回のシミュレーション後、2022年漁期後の親魚量が2002~2010年(2008年を除く)の平均値275トン(平均親魚量)と1997~2010年の最小値63トン(Blimit)を下回らない割合で示した
  • 2018年漁期は2018年12月~翌年3月
コメント
  • 本系群のABC算定には規則1-3)-(2)を用いた
  • Flimit=(基準値か現状のF)×β1であるため、現状の漁獲圧維持シナリオでは基準値をFcurrentとし、β1を1.0とした
  • 資源量の増大シナリオは、震災前の平均的なFであるFave3-yrを基準値とし、β1については、加入量を2015~2019年の平均値とした時に2022年漁期まで資源量を一度も減少させることなく増大させる最大の値を探索的に求め(β1=0.9)、0.9Fave3-yrとした。このシナリオでは、今後の資源の増大が期待でき、2022年漁期まで資源量は減少することなく維持される
  • 適度な漁獲圧による漁獲シナリオでは、F0.1を基準値とし、β1を1.0とした
  • 親魚量は、漁期後の雌の漁獲対象資源量で示す
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「資源の維持もしくは増大を基本方向として、安定的な漁獲量を継続できるよう、管理を行うものとする」とされている

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

漁獲シナリオに対応したF値による資源量、親魚量及び漁獲量の予測:加入量条件は、2017年は調査から得られた推定値、2018~2019年は予測値、2020年以降は2015~2019年の平均値とした。1.0Fcurrentでは資源量、親魚量、漁獲量は増加する。0.9Fave3-yrでは資源量、漁獲量は増加を続け、親魚量は2018年漁期後に減少するがその後は増加する。1.0F0.1では資源量は2019年漁期に減少するがその後は増加する。親魚量は2018年漁期後に減少するが、その後は増加する。漁獲量は増加する。

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将来予測シミュレーション

加入量変動の不確実性を考慮した検討:2020年以降の加入量に2015~2019年の加入量からリサンプリングした値を仮定する1,000回のシミュレーションにより不確実性を検討した。2022年漁期後に2002~2010年(2008年を除く)の平均親魚量を維持する確率は、1.0Fcurrentで93%、0.9Fave3-yrで34%、1.0F0.1で41%であり、Blimitを維持する確率は全てのシナリオで100%である。

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資源変動と海洋環境との関係

浮遊期幼生の生残、着底海域への移送等に海流や水塊配置などが大きな影響を与えると推測されるが、詳細については不明である。

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執筆者:服部 努・柴田泰宙・成松庸二・鈴木勇人・森川英祐・永尾次郎

資源評価は毎年更新されます。