平成29年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 スルメイカ 魚種写真
学名 Todarodes pacificus
系群名 秋季発生系群
担当水研 日本海区水産研究所

生物学的特性

寿命: 約1年
成熟開始年齢: 雄は約9カ月、雌は約10カ月以降
産卵期・産卵場: 10~12月、北陸沿岸~東シナ海
食性: 沿岸域では小型魚類、沖合域では動物プランクトン
捕食者: 主に大型魚類、海産ほ乳類

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漁業の特徴

主に日本海において、いか釣り漁業で漁獲される。沿岸域の漁獲物は主に生鮮で、沖合域の漁獲物は主に冷凍で水揚げされる。我が国の他、韓国、中国、北朝鮮、ロシアによっても漁獲されている。韓国による漁獲量は多く、1999年以降は我が国を上回っている。中国による漁獲量は、2004年以降、増加傾向と考えられるが、正確な情報が不足している。ロシアの漁獲量はこれまで少なかったが、2016年、2017年と増加傾向との情報がある。

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漁獲の動向

我が国の漁獲量は1970年代半ば以降に減少し、1986年に5.4万トンとなった。その後増加し、1990年代に11万~18万トンとなった。2000年以降は再び減少傾向となり、2016年は2.6万トンであった。2016年の韓国による漁獲量は5.6万トンで、日韓合計の漁獲量は8.2万トンとなった。旧中型いか釣り船のCPUE(1日1隻あたり漁獲量)は90年代に上昇したが、2000年代以降減少傾向である。

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資源評価法

漁場一斉調査により得られるCPUE(釣機1台1時間あたりの採集尾数)から資源量を推定し、資源の水準・動向を判断した。同調査は、毎年6~7月に自動いか釣り機による試験操業を日本海の日本側水域全域で実施するもので、全調査点のCPUEの平均値を資源量指標値として、各年の資源量を推定した。推定された資源量および再生産関係から、管理基準値の推定と資源量予測を行った。

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資源状態

資源量は1990年代に増加し、2000年代以降は100万~200万トンで推移したが、2014年以降減少し、2017年は96.8万トンであった。親魚量も資源量と同様に推移した。再生産成功率は1990年代と比べ2000年以降低い値で推移し、その理由として、海洋環境の変化(秋季の高水温化)や密度効果が考えられる。また近年は、外国による未集計の漁獲があることにより親魚量が過少評価され、見かけ上再生産成功率が低く推定されている可能性もある。Blimitは高い再生産成功率の時に高い加入量が期待できる親魚量(14.5億尾、40.5万トン)とし、2017年漁期後の予測親魚量(17.1億尾、47.8万トン)はBlimitを上回っている。水準は、高・中位の境界を資源量が増加した1990年代の平均値(108.7万トン)、中・低位の境界を資源量が少なかった1980年代の平均値(51.3万トン)とし、水準は中位、動向は近年5年間(2013~2017年)の資源量の推移から減少と判断した。

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管理方策

2017年漁期終了時の親魚量(47.8万トン)はBlimitを上回っていることから、親魚量の維持を管理目標として、現状の漁獲圧を維持するシナリオ(Fcurrent)および親魚量の維持シナリオ(Fmed)で2018年のABCを算定した。将来予測に用いる再生産成功率には、1990年代と比べ2000年以降の再生産成功率が低い値であることを考慮し、1999年以降の再生産成功率の中央値(2.19)を用いた。この値と親魚量から2018年予測資源量は105万トンとなった。 なお、スルメイカ資源にとって不適なレジームに移行したと判断された場合、予測に用いる再生産関係およびBlimit等を変更する必要がある。また本系群は日本周辺諸国によっても漁獲されることから、各国間の相互協力による資源の評価・管理が必要である。
資源量(2018)=1,045千トンを仮定、 親魚量(2017)=478千トン、 Blimit=405千トン
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target
/Limit
2018年漁期
ABC
(千トン)
漁獲割合
(%)
F値
(現状の
F値からの
増減%)
2022年
漁期後の
親魚量
(千トン)
(80%区間)
確率評価(%)
2022年
漁期後に
2017年
漁期後の
親魚量を維持
2022年
漁期後に
Blimitを維持
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Target 63 6 0.09
(-20%)
778
(358~1,854)
80% 86%
Limit 78 8 0.11
(±0%)
699
(325~1,717)
76% 83%
親魚量の維持
(Fmed)
Target 105 10 0.15
(+37%)
574
(281~1,522)
68% 76%
Limit 129 12 0.18
(+71%)
478
(244~1,298)
61% 69%
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量。Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量
  • Ftarget = αFlimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
  • Fcurrentは2014~2016年のFの平均値
  • 漁獲割合は2018年漁期漁獲量/資源量
  • 漁獲シナリオにおける「親魚量の維持(Fmed)」は、中長期的に安定する親魚量の維持を指し、日本海西部海域における秋季の水温が上昇した1999年以降の再生産成功率の中央値(2.19)に対応するF
  • 将来予測には1999年以降の再生産成功率の中央値(2.19)を用いた
  • 2018年漁期は2018年4月~2019年3月
コメント
  • 本系群のABC算定には規則1-1)-(1)を用いた
  • 現状の漁獲圧は資源を悪化させる状況にはないと判断される
  • 漁獲量の年変動は大きく、資源量は短期的に変動すると推測される
  • スルメイカ資源にとって不適なレジームに移行したと判断された場合は、加入量予測に用いる再生産関係およびBlimit等を変更する必要がある
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「本資源は減少傾向にあるが、これは海洋環境の変化に伴う再生産環境の悪化によると考えられ、短期的には減少傾向を緩和し、中期的には環境が改善された場合に資源を速やかに増大できるよう親魚量を確保することを基本方向とする。ただし、本資源は、大韓民国等と我が国の水域にまたがって分布し、外国漁船によっても採捕が行われており我が国のみの管理では限界があることから、関係国との協調した管理に向けた取組が行えるよう努めつつ、管理を行うものとする」とされており、親魚量の維持シナリオ以下の漁獲圧であれば、産卵場における海洋環境が改善し再生産成功率が向上したときに資源増大が図れると考えられる

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測:今後の資源量および漁獲量は、Fcurrentでは2018年以降増加し、Fmedでは2018年以降一定となる。

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将来予測シミュレーション

加入量変動の不確実性を考慮した検討:1999年以降の再生産成功率をリサンプリングし加入量を仮定する将来予測シミュレーションを行った。2022年漁期終了時の親魚量がBlimitを維持する確率は、Fcurrentでは83%、Fmedでは69%であった。

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資源変動と海洋環境との関係

スルメイカの資源量は中長期的および短期的な海洋環境の変動に影響される。そのため、海洋環境や幼生の分布状況のモニタリング調査によって資源動向を把握することが重要であり、資源動向が変化した場合には管理基準値を変更する等、状況変化に応じた対処が必要である。レジーム変化の判定についても、的確な判定をするための基準が必要であり、情報収集と検討を進めていく必要がある。

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執筆者:久保田洋・宮原寿恵・松倉隆一・後藤常夫

資源評価は毎年更新されます。