令和元年度資源評価報告書(ダイジェスト版)

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標準和名 マイワシ 魚種写真
学名 Sardinops melanostictus
系群名 太平洋系群
担当水研 中央水産研究所

生物学的特性

寿命: 7歳程度
成熟開始年齢: 1歳(10~50%)、2歳(100%)、資源水準により変化する。2016年以降では1歳(20%)、2歳(100%)
産卵期・産卵場: 11~翌年6月で、盛期は2~4月。産卵場は四国沖~関東近海
食性: 仔稚魚期は動物プランクトン、成魚は加えて珪藻類
捕食者: 中・大型の魚類、イカ類、海産ほ乳類、海鳥類

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漁業の特徴

主要漁業は幼魚~成魚を対象とする大中型・中型まき網、定置網である。 シラスも船びき網等によって漁獲される。 三重県以東(太平洋中・北区)での漁獲が多く、房総以北の大中型まき網が大部分を占める。 和歌山県以西(太平洋南区・瀬戸内海区)での漁獲は、三重県以東に比べ少なく、2015年に増加したものの、その後減少している。 1980年代には道東沖のまき網漁場で大量の漁獲があった。 1990年代以降、資源の減少に伴い漁場は消滅していたが、最近の資源増加に伴い来遊量が増加し、2012年以降漁場が形成されている。

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漁獲の動向

漁獲量は、1970年代後半に増加し、1980年代は250万トンを超える極めて高い水準で推移した。 しかし、1990年代に入ると急減し、1993年には100万トンを下回り、1990年代後半は10万~30万トン台で推移した。 2000年代はさらに減少し、10万トンを下回る低い水準で推移していたが、2011年に大きく増加し10万トンを上回り、その後増加傾向にある。 2018年は45.1万トンとなった。

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資源評価法

1976年以降の年齢別漁獲尾数に基づき、コホート解析により資源量を算定した。 なお、卵稚仔調査、北西太平洋秋季浮魚類資源調査の調査データ、および冬季の房総~常磐海域の大中型まき網漁獲量データを用いて、産卵量、加入量および1歳魚資源量のチューニングを行っている。

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資源状態

資源量は、1980年代の1000万トン以上の高水準から減少し、2000年代は10万トン前後の低水準で推移してきた。 しかし、2010年以降、増加傾向にあり、2018年は348万トンと推定された。 親魚量も2011年以降増加し、2018年は163万トンであった。 再生産成功率は近年は比較的高い傾向にあり、親魚量の増加も相まって、2010年以降良好な加入が継続している。 漁獲係数は、2000年代後半に減少し、近年は低く維持されている。 Blimitは、1996年水準の親魚量22.1万トンとした(この値を下回ると、良好な加入量が期待できなくなる)。 禁漁水準(Bban)は、1950~60年代の資源低水準期における推定最低資源量2.2万トンとした。 2018年の親魚量、資源量はBlimit、Bbanを上回っている。 資源水準の区分は親魚量で判断し、500万トン以上を高位、Blimit以上を中位、Blimit未満を低位とした。 2018年の親魚量から2018年の資源水準は中位、動向は過去5年間(2014~2018年)の資源量・親魚量の推移から増加と判断した。

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管理方策

2018年の親魚量(163万トン)はBlimitを上回っていることから、親魚量の維持または増大を管理方策とし、現状の漁獲圧の維持(Fcurrent)、親魚量の増大(F30%SPR)および親魚量の維持(Fmed)を図る漁獲シナリオを適用しABCを算定した。 現状の漁獲圧は高くなく、Fcurrentで資源の増加が見込まれる。 現状よりも漁獲圧を高めるF30%SPRやFmedでも、資源量および親魚量は現状より高い水準で維持される。
資源量(2020)=5,462千トンを仮定、 親魚量(2018)=1,629千トン、 Blimit=221千トン
漁獲シナリオ
(管理基準)
Target
/Limit
2020年
ABC
(千トン)
漁獲割合
(%)
F値
(現状の
F値からの
増減%)
2025年の
親魚量
(千トン)
(80%区間)
確率評価(%)
2025年に
2018年親魚量を
維持
2025年に
Blimitを
維持
現状の
漁獲圧の維持
(Fcurrent)
Target 844 15 0.29
(-20%)
6,739
(2,259~12,563)
99 100
Limit 1,025 19 0.36
(±0%)
5,296
(1,733~9,993)
92 100
親魚量の増大
(F30%SPR)
Target 1,139 21 0.41
(+13%)
4,527
(1,458~8,601)
86 100
Limit 1,368 25 0.51
(+41%)
3,247
(1,013~6,249)
73 100
親魚量の維持
(Fmed)
Target 1,173 21 0.42
(+17%)
4,311
(1,381~8,207)
84 100
Limit 1,408 26 0.53
(+47%)
3,057
(949~5,897)
70 100
定義
  • Limitは、各漁獲シナリオの下で許容される最大レベルのF値(漁獲係数)による漁獲量、Targetは、資源変動の可能性や誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、各漁獲シナリオの下でより安定的な資源の増大または維持が期待されるF値による漁獲量
  • Ftarget=αFlimitとし、係数αは標準値0.8を用いた
  • Fcurrentは2014~2018年のFの平均値
  • Fmedは不確実性が高い最近年(2018年)を除く1988年以降の資源量中位水準と判断される年(1991~2000、2012~2017年)の再生産成功率の中央値(RPSmed:22.1尾/kg)に対応する漁獲係数
  • 漁獲割合は2020年の漁獲量/資源量
  • F値は各年齢の単純平均値
  • 漁獲シナリオにある「親魚量の維持」は中長期的に安定する親魚量での維持
  • 2019年以降の加入量は、不確実性が高い最近年(2018年)を除く1988年以降の資源量中位水準と判断される年(1991~2000、2012~2017年)の再生産成功率の中央値を使用して予測した
コメント
  • 本系群のABC算定には規則1-1)-(1)を用いた
  • 本系群は加入量及びF値の年齢別選択率の年変動が大きいため、将来予測における不確実性が高いことを考慮した漁獲シナリオの選択や予防的措置の選択がなされることが望ましい
  • 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画第3に記載されている本系群の中期的管理方針では、「海洋環境が資源の増大に好適な状況になる可能性があることから、海洋環境や資源動向及び漁獲動向に注意しつつ、資源水準の維持(可能な場合には増大)を基本方向として、管理を行うものとする」とされており、親魚量の維持シナリオから得られる漁獲係数以下であれば、現状の資源水準の維持または増大が期待できる

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資源評価のまとめ

管理方策のまとめ

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期待される管理効果

漁獲シナリオに対応したF値による資源量及び漁獲量の予測:Fcurrentの場合、資源量および親魚量は増加する。 現状よりも漁獲圧を高めるF30%SPRやFmedでも、資源量および親魚量は2018年より高い水準で維持される。 将来的な漁獲量は、FcurrentがF30%SPRおよびFmedを上回る。

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将来予測シミュレーション

加入量変動の不確実性を考慮した検討:加入量の変動を考慮した将来予測シミュレーションを行った(1,000回試行)。 加入量は、再生産成功率を過去の観測値からリサンプリングすることで与えた。 リサンプリングする期間は、親魚量に対応させ変化させた。 2025年の親魚量がBlimitを維持する確率は、どのシナリオでも100%であった。 2018年水準を維持する確率は、Fcurrentでは92%と高く、F30%SPRでは73%、Fmedでは70%とやや低くなっている。

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資源変動と海洋環境との関係

本資源は、海洋環境のレジーム・シフトと同期して50~100年程度の周期で変動しており、北西太平洋での寒冷レジームにおいて、資源量が増大することが知られている。 資源増大のメカニズムは明らかではないが、稚仔魚の生育場の黒潮続流域で、アリューシャン低気圧の勢力の強化によって風が強まり、下層からの栄養塩供給が増えて餌量が増加し、加入量が増大するためと考えられている。 また、その他の海洋環境との関係として、冬春季の親潮南下指数が高いと再生産成功率が高いことが示されている。 これは、親潮によって稚仔魚の生育場の餌量が増加して生残率が高くなるためと推察されている。

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執筆者:古市 生・由上龍嗣・上村泰洋・林 晃・井須小羊子・渡部亮介

資源評価は毎年更新されます。