平成２９年度資源評価報告書（ダイジェスト版）
| アマダイ類 |  |
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| 学名 | Branchiostegus spp. | |
| 系群名（海域） | （東シナ海） | |
| 担当水研 | 西海区水産研究所 | |
生物学的特性
注：東シナ海域のアマダイ類にはアカアマダイ、シロアマダイ、キアマダイ、スミツキアマダイ、ハナアマダイが含まれるが、ここでは漁獲の主体であるアカアマダイの生物学的特性を示す| 寿命： | 雄10歳、雌9歳程度 |
| 成熟開始年齢： | 雌：2歳（24％）、3歳（40％）、4歳（52％）、5歳（74％）、6歳（92％） 雄：3歳（3％）、4歳（35％）、5歳（46％）、6歳（69％） |
| 産卵期・産卵場： | 5～11月、盛期は東シナ海で8～9月、他に対馬北東海域、日本海南西海域、済州島周辺海域、台湾北東部海域等 |
| 食性： | 魚類、甲殻類、多毛類、頭足類、貝類、棘皮動物 |
| 捕食者： | 不明 |
漁業の特徴
東シナ海陸棚上～陸棚斜面域（以下、東シナ海陸棚域）を主分布域とするが、現在、我が国の漁業は日本海南西～九州西岸海域を主漁場としている。漁業の主体ははえ縄漁業であるが、各種底びき網漁業によっても漁獲されている。東シナ海陸棚域においては、1990年代初頭まで我が国のはえ縄漁業が主要な漁業であったが、現在では中国が漁獲の大半を占めている。韓国・台湾によっても漁獲されている。我が国水域における外国の漁獲、外国水域における我が国の漁獲もある。山口県では2015年度に63千尾のアカアマダイの種苗放流が行われた。
漁獲の動向
山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県によるアマダイ類漁獲量は、1988年まで計1万トン以上あったが、主に東シナ海における漁業の衰退により、その後減少した。2016年の5県の漁獲量は687トン（暫定値）であった。県別では山口県と長崎県の漁獲量の割合が多い傾向が続いている。中国では2015年に4.4万トン、韓国では2016年に1,831トンの漁獲があった。主分布域である東シナ海陸棚域における我が国の漁獲量は周辺国の漁獲量に比べて極めて小さく、我が国の漁業が東シナ海陸棚域におけるアマダイ類資源に与える影響は限定的である。
資源評価法
評価対象海域をかつての主漁場である東シナ海陸棚域と、現在の我が国漁業の主漁場である日本海南西～九州西岸海域に分け、海域ごとに水準・動向判断とABC算定を行った。東シナ海陸棚域では、資源水準を以西底びき網漁業（以西）の資源密度指数および着底トロール調査による底魚類現存量調査の結果から判断した。また資源動向を資源量指標値（以西の2漁場での1網あたり漁獲量（CPUE）および現存量推定値の相乗平均値）から判断した。日本海南西～九州西岸海域では、資源水準を長崎県沿岸域と福岡県の漁獲量から判断した。また資源動向を資源量指標値（沖合底びき網漁業の資源密度指数、山口県におけるはえ縄漁業CPUE（kg/隻・日）および日本海南西～九州西岸海域における漁獲量の相乗平均値）から判断した。
資源状態
東シナ海陸棚域の資源は、以西の資源密度指数が1995年以降大きく低下したことから、低水準となったと考えられる。また現存量推定値からも資源水準は回復していないと考えられることから、水準を低位と判断した。日本海南西～九州西岸海域では、長崎県沿岸域および福岡県の漁獲量の合計の最大値と最小値との間を3等分し、高位・中位・低位とした。2016年の漁獲量は293トンで低位に区分されたため、水準を低位と判断した。水準は両海域ともに低位であるため、評価対象海域全体でも低位と判断した。資源動向は、直近5年間（2012～2016年）のそれぞれの海域における資源量指標値の推移から、東シナ海陸棚域では横ばい、日本海南西～九州西岸海域では増加と判断した。評価対象海域全体の動向判断では、本評価主対象海域である東シナ海陸棚域での判断を重視し、横ばいとした。
管理方策
評価対象海域を東シナ海陸棚域および日本海南西～九州西岸海域に分け、海域ごとにABCの算定を行った。東シナ海陸棚域の資源水準は低位である。しかし我が国の漁業が本資源に与える影響は極めて小さいと考えられる。このため資源量指標値の変動に合わせて漁獲することを管理方策とした。日本海南西～九州西岸海域でも資源水準は低位である。したがって資源状態を速やかに回復させるために、漁獲を抑制することが必要と判断し、漁獲量を減じたうえで、資源量指標値の変動に合わせて漁獲することを管理方策とした。海域ごとに計算した合計を全体のABCとした。なお、アマダイ類資源全体に対する実効性のある資源管理のためには周辺国、特に中国の協力が不可欠である。
| 管理基準 | Target/Limit | 2018年ABC （トン） |
漁獲割合 (％) |
F値 (現状のF値からの 増減％） |
| 1.0•C2016a•1.08+ 0.8•C2016b•1.07 |
Target | 473 | － | － |
| Limit | 591 | － | － |
- Limitは、管理基準の下で許容される最大レベルの漁獲量、Targetは資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、安全率αを掛けた漁獲量
- 算定規則 2－1）によりABClimit＝δ1・C2016・γ1、ABCtarget＝ABClimit・αで計算し、係数αには標準値0.8を用いた
- C2016は2016年漁獲量でC2016aは東シナ海陸棚域における2016年の漁獲量、C2016bは日本海南西～九州西岸海域における2016年の漁獲量
- 東シナ海陸棚域では我が国の漁獲努力が評価対象資源全体に与える影響は小さいため、δ1は1.0を使用した。日本海南西～九州西岸海域では資源水準が低位であるため、δ1は0.8を使用した
- γ1は、γ1＝1＋k（b/I)で計算をし、kは係数（低水準時の推奨値0.5）、bとIは直近3年間（2014～2016年）の資源量指標値の傾きと平均値であり、東シナ海陸棚域ではそれぞれ0.75と9.8を、日本海南西～九州西岸海域では3.80と52.8を用いた
- ABCは我が国漁業による外国水域での漁獲量を含み、外国漁業による我が国水域での漁獲量を含まない
資源評価のまとめ
- 東シナ海陸棚域の水準・動向は、低位・横ばい
- 日本海南西～九州西岸海域の水準・動向は、低位・増加
- 評価対象海域全体について水準は低位で、動向は資源評価主対象である東シナ海陸棚域を重視し、横ばい
管理方策まとめ
- 東シナ海陸棚域および日本海南西～九州西岸海域で海域ごとに算定したABCの合計を全体のABCとした
- 東シナ海陸棚域では資源量指標値の変動に合わせて漁獲することを管理方策とした
- 日本海南西～九州西岸海域では漁獲量を減じたうえで、資源量指標値の変動に合わせて漁獲することを管理方策とした
- 実効性のある資源管理のためには周辺国の協力が不可欠である
執筆者：酒井 猛・川内陽平・青沼佳方
資源評価は毎年更新されます。