平成29年度資源評価報告書(ダイジェスト版)
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標準和名
ケンサキイカ
学名
Uroteuthis edulis
系群名
日本海・東シナ海系群
担当水研
西海区水産研究所
生物学的特性
寿命:
1年
成熟開始年齢:
約5か月
産卵期・産卵場:
周年、盛期は冬以外
食性:
小型の魚類、甲殻類、軟体類
捕食者:
不明
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漁業の特徴
沿岸域では主にいか釣り漁業(いか釣り)により、沖合では主に底びき網漁業により漁獲される。長崎県沖合~山陰沖では沖合底びき網漁業(沖底)の漁場が形成される。東シナ海では、南部の陸棚域で以西底びき網漁業(以西)によって主な漁場が形成されていたが、2004年以降、以西は夏季に操業せず、この海域にほとんど出漁しなくなった。1991年以降は東シナ海南部を中心にいか釣り漁船による操業が6~10月にかけて行われている。 外国漁船による漁獲も多いとみられるが、詳細は不明である。
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漁獲の動向
漁獲量は1988年には3.53万トン余りであったが、減少して2001年以降は1.00万トン前後の漁獲量となっている。2016年は0.93万トンであった。海域別でみると、九州西岸~日本海西部にかけては1988年の2.42万トンから変動しながら減少し、2016年は0.92万トンであった。一方、東シナ海南部は1988年には1.10万トンだったが、減少して、2016年には67トンであった。 ここで、九州西岸~日本海西部は沖底、沿岸域、以西の北緯30度以北、東シナ海南部はいか釣り(東シナ海)、以西の北緯30度以南を示す。
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資源評価法
資源水準は総漁獲量から判断した。2そうびき沖合底びき網漁業(沖底2そう)、2そうびき以西底びき網漁業(以西2そう)、いか釣り(東シナ海)、各県代表港のいか釣りでの単位努力量当たり漁獲量(CPUE(網数あたり漁獲量))を指標とした。これらのCPUEから来遊量指数を算定し、資源量指標値として動向を判断した。
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資源状態
2016年は沖底2そう、以西2そう、東シナ海南部で主に操業するいか釣り(東シナ海)のCPUEは前年を下回った。さらに、各県代表港におけるいか釣りにおいては、漁獲量はおおむね中~低水準とみられ、直近5年間(2012~2016年)のCPUEの動向も、長崎県の壱岐海域を除いて、横ばいから減少傾向だった。系群全体の水準については、1988年以降の総漁獲量の最大値と最小値の範囲を三等分した値をそれぞれ高位と中位、中位と低位の境界値とし、2016年の漁獲量から水準は低位、動向については直近5年間(2012~2016年)の資源量指標値の推移から減少と判断した。
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管理方策
現在我が国の漁船が主に利用している漁場は九州西岸から日本海西岸であり、この海域では、東シナ海からの来遊量が多い可能性が指摘されている。そのため、資源水準および資源量指標値に合わせて漁獲することを管理方策として2018年ABCを算出した。 ケンサキイカ資源には複数の季節発生群が存在することが知られていることから、豊度の高い発生群を利用し、豊度の低い発生群を保護する管理方策が有効である。
管理基準
Target/Limit
2018年ABC
(百トン)
漁獲割合
(%)
F値
(現状のF値からの
増減%)
1.0・C2016・1.06
Target
79
-
-
Limit
98
-
-
Limitは、管理基準の下で許容される最大レベルの漁獲量、Targetは、資源変動の可能性やデータ誤差に起因する評価の不確実性を考慮し、より安定的な資源の維持が期待される漁獲量
ABCtarget = αABClimitとし、係数αには標準値0.8を用いた
ABC算定規則2-1)によって、ABCはABClimit=δ
1
・Ct・γ
1
で計算した
現在我が国の漁船が主に利用している漁場は九州西岸から日本海西部であるが、この海域に来遊する群は外国漁船の影響の大きい東シナ海からの来遊量が多い可能性が指摘されていることから、資源水準が低位であるものの、δ
1
は1.0とした
γ
1
は、γ
1
=1+k(b/I)で計算をし、kは係数(標準値の1.0)、b(1.6)とI(28.2)は資源量指標値の傾きと平均値(直近3年間(2014~2016年))
Ctは2016年漁獲量
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資源評価まとめ
資源水準は低位、動向は減少
沖底2そう、以西2そう、いか釣り(東シナ海)では2016年のCPUEは前年を下回った
沿岸域で操業するいか釣りCPUEは、横ばいから減少傾向の海域が多かった
管理方策のまとめ
資源水準および資源量指標値に合わせて漁獲を行なうことを管理方策として、ABCを算出した
かつて日本漁船の主漁場であった東シナ海南部では多数の外国漁船が出漁しており、高い漁獲圧がかかっている可能性がある
豊度の高い季節発生群を利用し、豊度の低い季節発生群を獲り控えることが重要である
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執筆者:依田真里・髙橋素光
資源評価は毎年更新されます。